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「頼りになる母がまさか…」 親の認知症の前兆をどう見極めるか

「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」、ここが違う

「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」、ここが違う

「私はあまりにも情報を持っていなかった。もしもあのとき知っていたら、と思うことがすごく多い」──そう後悔を口にするのは、「食堂のおばちゃん」作家として知られる山口恵以子さん(61才)だ。最愛の母・絢子(あやこ)さんと過ごした最期の日々をあたたかな筆致で綴った新著『いつでも母と』(小学館刊)を読むと、母の認知症発症から介護、自宅での看取りまで、戸惑いと不安の中、家族が決断しなければならないことがいかに多いかがわかる。親の異変、それは突然やってくる。

認知症発症の何年も前から前兆が表れる

 昨年1月、山口さんは91才の母を自宅で看取った。山口さんは3人きょうだいの末っ子で兄が2人。上の兄、山口さんと同居していた母に、認知症の症状が顕著に表れるようになったのは2000年のこと。父の急死が引き金になった、と山口さんは話す。

「テレビのリモコンを風呂場のバスタオルの間に突っ込んだり、私の口座に振り込まれたお金を『前に貸したお金』と言い出したり、少しずつ変だと思う行動が増えていきました。でも当時の私はまだ作家になる前で、実家暮らしで収入も少なかった。頼りになる母が認知症だなんて思いたくなかったんです」(山口さん)

 いまや認知症は身近に起こりうる病だ。内閣府の調査によると、2012年時点で認知症の高齢者数は462万人と、65才以上の約7人に1人が認知症であることが判明。さらに、2025年には5人に1人になるといわれている。シニアメンタルクリニック日本橋人形町の院長・井関栄三さんは言う。

「山口さんのお母さんのように家族を亡くすなどの精神的ショックを機に、症状が表面化することはよくあります。ただし、ショック自体が認知症を引き起こすわけではありません。認知症は発症する何年も前から前兆が表れていることが多いのです」

 認知症の場合は、「前兆の早期発見が大事になる」と井関さんは言う。

「認知症にはいくつか種類があり、記憶障害から始まるアルツハイマー型が約半数、幻視が特徴的なレビー小体型が約2割を占めます。これらの認知症は、軽度認知障害(MCI)の段階で病院にかかれば、投薬や生活上の注意で進行を遅らせることができます。

 MCIは、認知機能の一部が低下しているが日常生活に支障はない状態。いずれ進行すれば認知症になりますが、早めに病院にかかれば、経過が大きく変わってきます」

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