大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

大前研一氏 岩盤規制を撤廃すれば日本経済の可能性はこんなに広がる

 日本はそうしたスマホ時代の電子化の波に著しく乗り遅れている。処方箋は未だに紙のままだし、薬局は基本的に1日平均40枚の院外処方箋に対して1人以上の薬剤師を配置しなければならない。そうした規制をなくして、ネット経由で配送できるようにすれば、ドラッグストア業界は大々的な効率化が可能になる。

 規制撤廃が新たなビジネスになる有力分野は教育だ。現状では、教員免許を持っていないと基本的に初等・中等教育では教壇に立つことができない。しかし、この規制を撤廃し、たとえば英語は母国語が英語の国の国語免許を持った人に、コンピューターのプログラミングはIT企業の専門家に教えてもらえば、実務能力は格段に高くなる。

仕事を生かした副業で「教師」に

 最近は副業を認める企業が増えているが、どうせ副業をやるなら、自分たちの得意分野で社会奉仕すればよい。そのほうが、単に収入を増やすためだけの副業をやるより、本人のモチベーションも上がるはずだ。

 規制を撤廃すれば、農業や漁業も蘇る。たとえば、今や稲作は農家の平均年齢が70歳を超えて先細りする一方だ。そこで、農協の金融機構が持っている巨額資金などを活用し、ベトナムやタイ、カンボジアなどの農民に日本の水田耕法を教える仕組みを構築し、その技術を習得した人たちが日本で農場を経営できるようにする。そうすれば、日本国内はコメの自給を維持できる一方、海外で日本の農業ビジネスを展開することも可能になる。農協を株式会社にして、オランダのように近代経営で輸出産業化することも可能だ。

 漁業の場合は、台湾や中国、ロシアの漁民が獲ったものを日本の漁港に水揚げできるようにする。漁民が洋上で仕入れて輸入できるようにしてもよい。いわゆる“瀬取り”だが、すでに日本の魚介類は漁港に水揚げされる量より貨物港への輸入量のほうが多いのだから、何も問題はないだろう。

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