「大企業」にも斬り込む
──今後のSBIホールディングスの戦略は?
北尾:今年4月末に三井住友フィナンシャルグループと広範囲の業務提携を発表し、今後も第2弾、第3弾と様々なビジネスを一緒にやっていこうと思っています。ただ、当社のメインバンクはみずほ銀行ですので、そちらにも当然仁義は切ります。
オープン・イノベーションという言葉があるけれど、僕はオープン・アライアンスと言っていて、顧客基盤を持っているいろんなところとどんどん組んでいきます。
ホールセール(大口の金融取引)に関しては、これまで証券と金融法人を結びつけて関係性を強化してきましたが、地方創生の観点からも引き続き地銀との連合づくりに力を入れ、関係性を強化していきます。
SBI証券は、国内株式の委託個人売買代金シェアが継続して35%以上と証券トップでベンチャー企業の株式公開引受けも圧倒的なシェアです。
残る課題は大企業にどう切り込むか。法人向けのビジネスを、M&A業務も含めてこれから一気に拡大していきたいと考えています。
もう1つが新商品の展開です。かつては金融機関が買っていた国債、いまはそうした金融機関の保有国債が満期になっても新発国債の買い手にはならず、誰が買うのかという状況です。
40年前、野村は大部隊を作って中期国債ファンドを売り出し、大ヒットしました。これが野村の預かり資産を一挙に拡大しましたが、僕は中期国債ファンドに代わるものをずっと考えてきた。それがだいぶ見えてきたので、いずれ皆さんに披露できるでしょう。
これからはますます「知恵が勝負」の時代になっていくと思います。
【プロフィール】北尾吉孝(きたお・よしたか):1951年兵庫県生まれ。1974年慶応義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。1978年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。1989年、ワッサースタイン・ペレラ・インターナショナル社(ロンドン)常務取締役。1991年、野村企業情報取締役。1992年、野村證券事業法人三部長。1995年、孫正義社長の招聘によりソフトバンク入社。1999年ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)を設立し社長就任。現在は、証券・銀行・保険などのインターネット金融サービス事業、新産業育成に向けた投資事業やバイオ関連事業などを幅広く展開するSBIホールディングス代表取締役社長。ライブドアによるニッポン放送買収騒動ではニッポン放送とフジテレビのホワイトナイト(敵対的TOBの防衛者)として颯爽と登場、一躍、時の人となった。著書にベストセラーとなった『何のために働くのか』をはじめ、『君子を目指せ 小人になるな』『修身のすすめ』などがある。その先見の明は政財界から常に注目されている。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2020年7月3日号