田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国景気の急回復を実現させた「コロナへの初動対応の早さ」

 経済政策では、もっとも重要な金融面での全面的なサポートが1月31日の通知によって発令された。これによって、脆弱な財務体質の中小零細企業や、人の移動制限によって大きなダメージを受ける業種の大企業の資金繰りを全面的にサポートした。その後、3月の全人代では新型インフラ設備投資を拡大させる政策が示され、積極財政も加わった。

 日米欧ではとても真似できない社会・経済・金融に対する迅速で強いコントロール力があったからこそ、新型コロナ禍の震源地でありながら、僅か3、4か月でその封じ込めに成功し、その後の経済の急回復につなげることができたと考えられる。

 前出のIMFによる世界経済見通しによれば、2020年におけるアメリカの成長率は▲4.3%、ドイツは▲6.0%、日本は▲5.3%といった有様だ。新型コロナについては、日本はともかく、アメリカ、欧州では封じ込めるどころか、感染者数は再び拡大している。

 この4年間、トランプ政権は、中国からの特定の輸入品に対して懲罰関税をかけたり、ファーウェイ(華為技術)を筆頭にハイテク企業に対して禁輸措置を行ったり、非常に厳しい対中強硬策を行ったが、果たしてそれで、中国経済はどれほどの影響を受けたのだろうか。

 トランプ政権が誕生する直前の2016年から2019年までの中国の実質GDP成長率をみると、順に6.85%(2位)、6.95%(3位)、6.75%(1位)、6.11%(1位)である。カッコ内はG20の中での順位である。成長率は2017年以降、年々下降しているとはいえ、中国は2018年も、2019年も、世界主要国の中では最も高い成長を達成している。そして、2020年に入ってからは既に示した通りである。

 アメリカは今回の大統領選挙によって、貧富の差による対立、人種による対立、保守とリベラルといったイデオロギーによる対立など、複雑な対立関係が改めて浮き彫りにされた。新型コロナの感染者数は世界最大、未だに封じ込めることができず、今期の成長率は大幅なマイナスが予想される。中国とアメリカのこの差について、なぜそうなるのか、その理由をもっと真剣に考えてみる必要がありそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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