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コロナで赤字169億円の「無印良品」が過去最高益を狙える理由

巣ごもり需要を追い風に急回復している良品計画(写真/時事通信フォト)

 コロナ禍で多くの業種がダメージを受けているが、そこからいち早く回復の兆しを見せようとしている企業もある。そうした企業は何が違うのか。30年以上にわたり、さまざまな企業を取材し続けてきた経済ジャーナリストの和島英樹さんが、業績急回復の兆しを見せる良品計画(7453)の取り組みについてレポートする。

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 新型コロナウイルスの影響が小売業界を直撃するなか、「無印良品」でお馴染みの良品計画が驚異的なスピードで業績を急回復させている。同社は、無印良品ブランドの企画、開発、製造から流通・販売までを一貫して手掛ける製造小売業(SPA)。生活雑貨が過半を占め、衣料から食品、家具まで幅広い品揃えが特徴だ。1991年にイギリスのロンドンに出店したのを皮切りに海外にも積極的に事業を展開し、中国、台湾、韓国などアジアでも高い地位を築いている。

 2020年8月期(決算期変更のため3~8月の変則決算)はコロナの影響をもろに受け、売上高は1793億9200万円、営業利益は8億7200万円だった。1年間の決算だった前年の営業利益363億8000万円から考えると、その激減ぶりは深刻だ。米国事業は「チャプター11」(日本の民事再生法に相当)を申請し事実上倒産。減損処理を実施し、最終損益は169億1700万円の赤字となった。

 しかし、営業利益をよく見てみると、第1四半期(3~5月)は28億9900万円の赤字だったが、第2四半期(6~8月)には早くも37億7200万円の黒字に転じている。売上高も、第2四半期には前年同期比で3.3%減にまで回復しており、驚異のリカバリーを見せている。欧米は第2四半期がコロナによる打撃のピークだったが、人々の活動が再開した中国、日本、台湾などのアジアでカバーし、EC事業も業績に貢献したようだ。

 同社が導入しているSPAは、ファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」など衣料品大手が導入する形態。通常、衣料品は卸を通じて仕入れるが、SPAは企画・開発を自社で行い素早く製造するため、卸を通さずに販売できる。流行やニーズに合った商品を素早く流通させることで利益を上げる方法だ。これを雑貨で採用しているケースは極めて稀。既存の雑貨小売店では長い付き合いの卸業者の存在が大きくビジネスモデルを転換しにくいが、良品計画はいち早くアパレル以外の分野でSPAを展開し他社との差別化に成功した。

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