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電通、NEC、ソニーほか、有名企業「自社ビル売却」の事情と葛藤

1989年に建設されたアサヒビール本社

1989年に建設されたアサヒビール本社

よくぞ取り戻してくれた

 苦難の時代からの脱却を、本社ビルで示した企業もある。

 1980年代前半、アサヒビールは業績不振に陥り、東京の本拠地だった墨田区・吾妻橋工場の売却を余儀なくされた。『経済界』編集局長の関慎夫氏は当時をこう語る。

「経営再建で住友銀行から乗り込んできた樋口廣太郎社長が1987年に『スーパードライ』を大ヒットさせて、吾妻橋工場があった土地を買い戻し、1989年に新本社ビルを建てた。社員は『よくぞ本社を取り戻してくれた』と語っていて、同社は2001年にビール類シェアで業界トップに上り詰めた。

 一方、ライバルのキリンは、2013年に渋谷区原宿と中央区新川の旧本社ビルを売って中野区へ引っ越し負債の返済などに充てています」

 しかしキリンは中野へ移転後、『本麒麟』の大ヒットなどで絶好調。昨年は11年ぶりに首位を奪還した。

“本社”を取り戻そうとしたものの、叶わなかったのがシャープだ。2015年、経営危機に陥っていたシャープは大阪市阿倍野区にあった本社ビルと田辺ビルを合計約188億円で売却した。

 2016年4月に台湾の鴻海傘下に入ると、戴正呉社長(当時)は「シャープの歴史がある場所だから、できれば買い戻したい」という意向を示した。田辺ビルは買い戻せたが、本社ビルは叶わなかった。

「シャープは東京で創業していますが、関東大震災で工場を焼失し、大阪の田辺で再起を図った。戴正呉氏は日本人のメンタリティをよくわかっている人で、社員をまとめるために取り戻そうと考えたのでしょう」(関氏)

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