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がんを患った妻が夫に仕込んだ料理 1年で150種類を習得するまでに

「治療が難しいがんだとわかってから、“料理は生きる力やで”と、つきっきりでスパルタ指導をしてくれ、なんとか作れるようになりました。『少々』を『小さじ1杯』だと勘違いして『何やってんや、あんたにやらせるより自分がやった方が100倍速いわ』なんて怒られながら、少しずつ覚えていきました。料理がまったくできない身からすれば、レシピ本に書いてある『塩こしょうで味を調える』といった抽象的な指示なんて、全然わからないんです」

 そんな藤井さんに、妻は「料理の型」を徹底して教え込んだという。

「ドレッシングなら油と酢と塩の割合がこれぐらいとか、煮物ならしょうゆとみりんの割合はどれくらいというようなパターンを口を酸っぱくして言われました。メモを取りながら覚えるようになってから、徐々に応用できるようになっていった。1年かけて教わったことで、料理が習慣として身についたから、夕食は必ず自分で作っています」

 1年の猛特訓が終わってしばらくののち、妻は自宅で藤井さんに見守られながら旅立っていった。

「妻の余命があと1か月に迫ったある日、教えてもらった野菜ポタージュを作ったことがありました。『おいしい! 満の料理、はじめておいしいと思った。仕込んどいてよかった』と言って笑った妻の顔、いまもよく覚えています。食いしん坊だった妻の、あのきびしい料理指導は、自分の死後もぼくに長生きしてほしい、という強い願いのあらわれだったのだと思います」(藤井さん)

 夫に元気で長生きしてほしい──根底にこの気持ちがあることが伝われば、夫もきっと変われるはずだ。

※女性セブン2021年2月18・25日号

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