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みずほATM障害 見え隠れする「顧客サービスを減らそう」という思惑

「ATM」の重要度が低下している現実もある。2019年9月、三菱UFJと三井住友は、店外ATMを互いに開放する共通化をスタートしたが、ATM共通化もその流れのなかに位置づけられる。

 超低金利により、顧客から集めた預金を貸し出して利益をあげるビジネスモデルが成立しなくなった。またネットバンキングの普及で支店やATMの存在意義が薄れ、各行ともコスト削減の意識は高い。

 銀行業界全体で年間700億円の印紙税がかかる紙の通帳や、1台年間700万円の維持費がかかるATMは、今後、段階的に姿を消すと見られる。コスト増やトラブルの種になるくらいなら、“顧客サービスそのものを減らしてしまえ”という思惑が見え隠れする。

 銀行の姿が大きく変わろうとしている。経済ジャーナリストの荻原博子氏は、先行きを懸念する。

「ビジネスモデル崩壊で、かつて花形だった銀行員は事実上、50歳定年となり、再雇用されても年収が半減するため、現役世代のモチベーションが低下しています。とりわけ、今回のトラブルで劣化が露呈したみずほは組織の立て直しが急務です」

 同行OBで作家の江上剛氏の見方も厳しい。

「一連の対応を見ると、みずほの組織が硬直化し、顧客対応が疎かになったことは明らか。銀行は顧客第一が経営原則でなければ信頼されません。みずほは『一個人の利益より社会の利益』と説き、自らの母体である第一国立銀行を創設した渋沢栄一氏の名に恥じぬよう、“顧客ファースト”を取り戻す必要があります」

“ダメガバンク”の汚名を返上する日は来るか。

※週刊ポスト2021年3月19・26日号

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