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ビル・ゲイツも注目、人工肉の開発競争が激化 業界大手が資金調達へ

インポッシブル・フーズの人工肉はバーガーキングの一部商品にも採用されている(Getty Images)

インポッシブル・フーズの人工肉はバーガーキングの一部商品にも採用されている(Getty Images)

「人工肉」開発競争が激化し始めている──。アメリカの人工肉製造大手のインポッシブル・フーズは、今後1年以内にIPO(株式新規公開)を行うか、特別買収目的会社との合併を通じた上場を目指していると報じられている。

 インポッシブル・フーズはスタンフォード大学の生化学分野の名誉教授であるパトリック・ブラウン氏が2011年に設立したベンチャー企業である。

 大豆など植物由来のタンパク質から人工肉を作るのだが、その中核技術は遺伝子組み換えと酵母による発酵技術だ。動物由来のタンパク質にはレグヘモグロビンといった基本物質が含まれており、それがうま味を感じる重要な成分である。同社は遺伝子組み換えで作り出した大豆に、大豆レグヘモグロビンを作り出すように遺伝子組み換えを行った酵母を注入し、醗酵させることでこの“肉のうまみ味成分”を作り出している。

 既に実用化が進んでおり、アメリカの各スーパーでハンバーガー用のパテ、ソースとして売られていたり、バーガーキングの主力商品であるワッパーのひとつに使われたりしている。直近の資料によれば、同社製品の使われているハンバーガーを扱う店舗数はこの1年間で150店から2万店以上に増えたそうだ。

 同社は2015年から2018年にかけて3度の資金調達を行っており、ビル・ゲイツ、グーグル系ベンチャーキャピタル、李嘉誠、テマセク(シンガポール政府系投資会社)などが株主に名を連ねている。これまでに調達した資金総額は4億ドル強だが、現在の市場価値は100億ドル以上だと市場関係者たちは評価している。

 一方、同社の最大のライバルである2009年設立のビヨンド・ミート(BYND)は2019年5月、NASDAQに新規公開を果たしており、IPOを通じて2億4000万ドルの資金を調達している。原材料としてエンドウを使用しており、インポッシブル・フーズの製法とは技術的に異なるようだ。ただ、開発途上ではあるが実際の動物の細胞を培養することによる人工肉の製造にも取り組んでおり、技術志向型の企業であるという点では同様だ。公開当時の資料をみると、ここにもビル・ゲイツが出資している。

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