住まい・不動産

コロナ禍で「終の住処」問題に変化 施設入居や地方移住の想定外トラブル

地方移住したら「話が違うじゃないか!」

 子供が独立して親が高齢になったら、田舎の自宅を処分して都会のマンションに引っ越す「ダウンサイジング」も人気だが、健康面と認知症に不安がある。

「団塊の世代以上は広々とした家で悠々と暮らしてきた人が多く、その生活が染みついています。それなのに都会の狭いマンションに引っ越したら運動や近所づきあいが減って老化や認知症のリスクが増加し、結果的に子供世代に介護の負担がのしかかります。

 そのリスクを避けるために、今後は安易に自宅を手放すのではなく、自宅を療養生活対応型にリフォームして住み続けることが選択肢の筆頭に変わっていきそうです。コロナ禍における訪問医療、ウーバーイーツやアマゾンなどの宅配サービスの普及も、『年老いてからも自宅に住み続ける』という流れを今後さらに後押しするでしょう」

 一時は老後を田舎で過ごす「地方移住」が注目されたが、その様相はコロナ禍で一変した。街づくりのスペシャリストで、エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さんが指摘する。

「軽井沢や鎌倉など、都会から近く、もともと移住者が多かった地域はコロナ禍でますます人が集まる一方、人口が10万人を切るような小さな地域は、外部から人が来ることに神経質になりました。閉鎖的だった地域がさらに閉鎖的になっており、いまは地域住民の家族が東京や大阪から帰省してくることすら拒絶する人たちもいます。この時期に地域と関係のない人が地元への配慮なしに都市部感覚で移住するのが歓迎されるはずがありません」

 コロナ禍に限らず、地方移住が失敗するケースは後を絶たないと木下さんが続ける。

「そもそも地方には町内会の行事などが多く、地域のおつきあいが苦手な人は移住しても失敗しやすい。また地方は水道代やガス代などが高く、バスの本数の減少や病院の老朽化などで公共サービスを都会並みに提供することが難しい。都会と同じような生活をして豊かな自然だけ享受しようともくろんで移住すると、『話が違うじゃないか!』となってしまう」

 田舎は都会よりシビアな一面も多い。安直な夢を抱くのはやめた方がよさそうだ。

※女性セブン2021年6月17日号

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