他にも、死者に対する名誉毀損や侮辱が同時に遺族などに対する名誉毀損等になる場合には当然、名誉毀損の不法行為が成立します。
そうした場合ではなくても、死者の名誉が毀損されると、遺族は傷つきます。直接遺族の名誉を毀損しなくても、遺族の死者に対する敬愛追慕の情が侵害され、その程度が社会通念上、我慢することができないほどひどい場合には、遺族に対する不法行為が成立すると考えられています。よって、死者であれば、何をいってもよい、ということにはなりません。
ただ、紀州のドン・ファン氏は自ら“ドン・ファン”と自称していたので、同氏の遺志に反することにはならないと判断します。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2021年8月13日号