吉田みく「誰にだって言い分があります」

定年後再雇用のリアル 「給料泥棒扱いされても辞めるわけにいかない」60代男性の葛藤

給料泥棒と呼ばれても耐えなければならない事情がある(イメージ)

給料泥棒と呼ばれても耐えなければならない事情がある(イメージ)

 フミオさんとしては、職場が盛り上がる話題作りのつもりだったそうだが、このことをよく思わない人もいるという。

「先日、職場の50代の後輩男性社員から小声で“給料泥棒”と言われました。たしかに大した仕事はしていないのは認めます。ですが、私に仕事をさせたくなさそうな雰囲気が社内にあるのも事実です。

 事務部門の係長であった私ですが、再雇用になってからは役職もなくなりました。今まで請求書作成メインで仕事をしていたので、私ができることは限られていることは誰もが知っているはずです。定年を迎え、再雇用になるまでは、皆と仲良く仕事ができていたはずなのに……。私だって居心地が悪いですよ」

 フミオさんと同様に再雇用された同世代の同僚はもう1人いる。彼は現場管理などの仕事をメインに行っているが、フミオさん曰く、「定年前と比べるとやる気がなさそう」とのこと。もしかしたら収入が減少したことが原因かもしれない、とフミオさんは推測する。

 会社に居づらさを感じている状況でも、フミオさんは「できるだけ長く会社に居たい」という。

「この職場を辞めたら次の仕事はないと思います。この年になって新しいことを覚えるのも大変ですしね。中途採用かつ中小企業ですので、退職金は微々たるものでした。貯金は100万円もありませんので、年金だけでは生活できません。収入が途絶えるのも厳しいです。職場の居心地はあまりよくないですが、毎日自宅で妻からガミガミ言われるのも辛い。私には居場所がないんです……」

 そんなフミオさんの最近の楽しみは、地元の市民センターで休日に行われている麻雀教室に通うこと。「同じような境遇の仲間と会話することで、不安が解消される」そうだ。若手社員とのコミュニケーションの仕方を学ぶために、関連書籍に目を通す習慣をつけているという。

 定年を迎えた後も、働くことで社会との繋がりや収入を確保しようと考える人が増えてきている。自分の武器になるスキルを増やし、再雇用後も必要とされる人材になるのが理想だが、実際には一筋縄に行かないことが多いようだ。

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