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日本初の「自動車運転外来」開設 医師は「脳の状態を調べれば運転能力判断できる」

運転をやめると要介護リスクが上がる

運転をやめると要介護リスクが上がる

高血圧や糖尿病の治療で「安全運転寿命」を伸ばすことも可能

 そうしたなかで注目されているのが、高知県で日本初となる「自動車運転外来」を開設した朴啓彰医師(高知検診クリニック脳ドックセンター長)の取り組みだ。朴医師はこう指摘する。

「運転能力は年齢で一律に括ることはできないし、認知機能にも個人差があります。信号や標識、子供の飛び出しなど、道路状況の変化に対応し続ける運転は非常に複雑で、脳全体を使って行なうもの。脳のネットワークは神経細胞と毛細血管により働くので、脳の状態を調べれば安全運転ができるかどうか判断できます」

 朴医師によると、自動車を運転する高齢者の脳を調べると、同じ健常者であっても「個人差」が明らかになるという。

「脳のMRI検査では『脳萎縮』や、毛細血管が壊れた『白質病変』が見られるケースがあります。それらが、危険運転や事故の原因になると考えられる。白質病変は加齢だけでなく、喫煙や高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病で毛細血管壁が傷つき、漏れが生じることで発症します。深部にまで及ぶ不規則な病変は70代の約3割に出現しているので注意が必要です。

 ただ脳は人それぞれ異なるポテンシャリティがあり、卓球など瞬時に体を動かすことで脳の神経ネットワークを鍛えれば運転は続けられるし、高血圧や糖尿病の治療をすることで『安全運転寿命』を延ばすこともできます」(朴医師)

 一方、持病の悪化により運転を諦めざるを得ないケースもある。朴医師の患者(70代後半)は、高血圧に対して降圧剤を服用しなかったことで白質病変容積値が毎年増加し、3年後には安全運転ができないレベルに達したという。

「高血圧は放置すれば白質病変の数値が悪化し、同時に周辺の神経線維にも損傷が及ぶ。血圧を抑えることは安全運転に大きく影響します」(朴医師)

 高齢者医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏はこう強調する。

「高齢者だからと闇雲に“返納せよ”と迫るのは差別です。それぞれが自分の状況を適切に判断し、持っている能力を維持し続けること。できることは放棄しない。健康寿命である〝80歳の壁〟を越えるためにも、まだ十分に運転できる人は免許返納すべきではない」

 脳の状態を知ることで、自信を持って運転を続けられるのであれば、自らや周囲の安心につながる。年齢ではなく、個々人が自身の体調と能力を把握することが大事だ。

※週刊ポスト2022年8月5・12日号

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