真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

金融引き締めで米国株下落見込みでも「日本株は連れ安しない」と考えられるワケ

割安な日本買いを進める海外投資家

 ここで、米国株に連動しやすい日本株も連れ安になると考えてしまいがちだが、必ずしもそうならないかもしれない。なにしろ昨年、米国をはじめ世界の株式市場で史上最高値更新が続いたなかでも、日経平均株価はバブル期の最高値(3万8915円)に遠く及ばなかった。世界的にみれば、それほど割安な水準に放置されており、言い換えれば、この先大きく下がるほど上がってはいない。今後も下値は限定的かもしれない。

 加えて、ここにきて日本株を割安とみる海外の投資家も増えている。最大の要因は、やはり円安だ。日米の金利差拡大は、裏を返すと、日本で株や不動産を買うために日本円を調達するコストが下がっていることを意味する。まして日銀の黒田東彦総裁が任期を迎える来年4月までは金融緩和が継続される見込みで、日米の金利差はますます拡大し、さらに円安が進むことで為替差益も狙えることから日本買いを進めているようだ。

 だからといって、この先も日本株が右肩上がりで上昇するとは考えにくい。やはり米国株に連動する側面はあるため、連れ安になる局面は出てくるに違いない。ただ、下がったところで買ってくる動きが出てくるため、下値を切り上げながらボックス相場の値幅が上にスライドするイメージで考えた方がいいだろう。日経平均株価でいえば、2万8000円近辺を下値に、そこから1割上昇して3万800円前後を上値とするボックス相場が予想されるのではないか。

 では、そのような展開が予想されるなか、個人投資家はどう向き合えばいいのか。ボックス相場で下値が限定的と考えるなら、下がったところは買いチャンスとなる。ただ、いつまでも上がり続けるとは考えにくいので、長期保有を前提とするのではなく、上値できちんと売っておくことが求められる。当面は「安値で買って高く売る」という投資の王道を着実に実践することを心がけたい。

【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。多摩大学特別招聘教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。近著に『ゲームチェンジ日本』(MdN新書)。

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