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真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

金利差拡大で1ドル=144円台は通過点か 若い世代は知らない“米金利20%の時代”も

円相場は1998年以来24年ぶりの1ドル=144円台に(9月7日。時事通信フォト)

円相場は1998年以来24年ぶりの1ドル=144円台に(9月7日。時事通信フォト)

 人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である多摩大学特別招聘教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第40回は、加速する「円安」の背景と見通しについて。

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 9月に入って、円安が加速。9月7日には一時1ドル=144円台を付けるなど、1998年以来24年ぶりとなる水準となっている。今年初めの115円台からわずか半年で25円以上も下落したことになる。

 急速な円安進行の背景にあるのは、日米の金利差拡大である。これまで世界経済はグローバル化によって1990年代から低金利かつ物価が上がらない状況が続いてきた。しかし、今年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻を機に世界的なインフレが加速し、FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレ対策として利上げを断行。一方の日銀は、金融緩和を継続しており、日米の金利差が拡大するなか、円安が進んできた。

 気になるのは、円安はどこまで進むのか。最近のトピックスをみても、円安がさらに進むような材料ばかりが目立っている。

 8月26日には各国の中央銀行総裁などを集めた「ジャクソンホール会議」でFRBのパウエル議長が金融引き締めの継続を表明し、利上げがまだまだ続くことが鮮明となった。9月2日に発表された米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比31.5万人増と市場予想をやや上回り、失業率は7月の3.5%から3.7%に上昇、平均時給は前月比0.3%上昇と思ったよりは悪化していないことから、インフレ退治を進めたいFRBにとってはいい数字が並んだ。

 また、ロシアの欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム」停止の継続が発表されたことで天然ガスの需給がタイトになるなか、9月5日には産油国でつくる「OPECプラス」が10月からの原油の減産を決めるなど、エネルギー価格の高騰が見込まれ、なかなかインフレに歯止めがかからず、これもFRBがインフレ対策として金融引き締めを進めるサポート材料となっている。

 FRBが進める金融引き締めは利上げだけではない。6月から保有資産を縮小するQT(量的引き締め)を進めてきたが、9月からはそのペースをこれまでの月475億ドルから950億ドルへと一気に倍増させる。これはコップの中からストローで吸い上げる量を倍のスピードにすることで、これまで市中に溢れてきたマネーがそれだけ一気に失われることになる。

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