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プロ野球「人的補償」制度これでいいのか? 実態は「いびつなトレード」、“抜け道”も多数

ネットで話題となった「岩瀬式プロテクト」

 今年のFA戦線では、西武の森友哉がオリックスと契約合意、日本ハムの近藤健介については争奪戦が繰り広げられていると報じられています。西武ファンと日ハムファンの皆様は森と近藤が出ていくことが残念でしょうが、人的補償という制度がある以上、そこで新加入する選手の活躍に期待するという楽しみ方もあると思います。

 過去には人的補償で「掘り出し物選手」もいました。左側がFA選手で、右側が人的補償選手の成績です。成績については、同選手の移籍先でのキャリアハイとも言える成績です。

加藤伸一(オリックス):ユウキ(近鉄)7勝1敗 1.93
新井貴浩(広島):赤松真人(阪神).285 4本塁打 33打点 20盗塁
門倉健(横浜):工藤公康(巨人)7勝6敗 3.91
村田修一(横浜):藤井秀悟(巨人)7勝7敗 3.75
大竹寛(広島):一岡竜司(巨人)6勝2敗 1.85

 人的補償の対象となって野球ファンを驚かせた大物選手の例としては、ソフトバンク・馬原孝浩(オリックス・寺原隼人の人的補償)、巨人・内海哲也(西武・炭谷銀仁朗の人的補償)、巨人・長野久義(広島・丸佳浩の人的補償)などがありましたね。

 巨人なんかは毎年、大量の選手を支配下から育成契約にしていますが、そもそもFAの人的補償は支配下選手が対象となるので、“人的補償逃れ”と指摘されることもしばしば。育成選手は、今年から始まる現役ドラフトの対象からも外れます。

 あとはかつて、中日が日本ハムの大野奨太をFAで獲得したところ、抑えの切り札・岩瀬仁紀がプロテクト漏れしていて、人的補償として指名されたものの、「人的補償になるなら引退する」と言って移籍を拒否した……という報道もありました(結果的に、中日は金銭補償で大野を獲得)。このように、プロテクトリストから外していながら引退をちらつかせて指名を防ぐ方法は、ネットでは「岩瀬式プロテクト」と呼ばれ話題になりました。

 このように“抜け道”的なものも多く、やはり人的補償は制度的にいろいろな問題があるのと思うのですが、何はともあれ現状そうした制度がある以上、新天地でのFA選手・人的補償選手の活躍を期待したいところです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

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