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キャリア
中学受験の“不都合な真実”

中学受験「報告してないのになんで塾が合否を知っているの?」 進学塾「合格実績カウント」のために“なりふりかまわぬ情報収集”

進学塾による「合格実績カウント」には疑問の声もある(写真:イメージマート)

進学塾による「合格実績カウント」には疑問の声もある(写真:イメージマート)

 新年度が始まり1か月が過ぎた。受験業界では「塾生獲得競争」がすでに始まっているようだ。フリーライターの清水典之氏が、公表データや取材をもとに過熱する中学受験の裏側をレポートするシリーズ「中学受験の“不都合な真実”」。今回は進学塾による塾生獲得に向けた宣伝・営業活動の実態をレポートする。

 * * *
 今春、子供の中学受験を終えた保護者の1人が、自身の体験をこう語る。

「中学受験が終わったあと、通っていた塾ではなく、模試とその解説講座を受けただけの塾から突然電話がかかってきて、『公立中学に通われるなら、うちには高校受験の講座が〜』と勧誘されたのです。うちの子が第一志望の学校に落ちたことを知っているような口ぶりで、怪訝に思いました。第一志望には不合格になったけど、第二志望の私立中学に進学することになっていたので、『私立の○○中に進学するので不要です』と電話を切りましたが」

 電話をかけてきた塾には、合否の報告をしていなかったのだという。また、別の保護者はこんな体験をしたと語る。

「入試前の夏休みに模試を受けた塾から、入試直前になって無料のオンライン講座を案内されました。『無料なら』と申し込もうとしたところ、ネットの申込欄には、『志望校』と『受験番号』『受験生の生年月日』の入力欄があり、ここに入力しないと申し込みができなかった。志望校はまだわかりますが、受験番号や生年月日なんて情報がなぜ必要なのかと疑問に思いました」

 今は私立も都立も中学入試の合格発表はネットで行なわれている。合否を確認するには「受験(受検)番号」とパスワードに設定された「生年月日」を入力するのが一般的だ(都立中高一貫校は入学者を試験ではなく適性検査で選抜するので「受検」と表記する)。なぜ、そのように使われる情報を、塾側が入試直前講習の申込時に入力させるのか。

高校に合格したら小学校の頃に通っていた塾の合格実績に?

『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)の著者で、フォロワー5万人超のXアカウント「東京高校受験主義」を運用する現役塾講師の東田高志氏はこう指摘する。

「受験番号と生年月日を直前講習の申込時に入力させる理由は、あとで塾側が合否の確認をする目的以外に考えられないと思います。直前講習の受験者が本番で合格していたら、自塾の合格実績にカウントするためでしょう。

 公益社団法人全国学習塾協会が制定した、合格実績の算出方法に関する自主基準では、その塾に『在籍』(契約書を交わしている)して、『入試直前の6か月間』に、『3か月以上』または『30時間以上』の指導実績のある生徒を対象にするとしています。大手学習塾のほとんどはそれに準じていますが、なかには、非常にゆるい基準で合格者をカウントしている塾もあります。塾に在籍していない生徒でも、模試やオンライン講座の指導などを受けただけで自社の合格者とする塾がある。そういう塾が、他塾の塾生の合否結果を調べ、合格なら合格実績にカウントしていると推測されます」

 冒頭で、合格発表後の営業電話に「私立の○○中に進学するので不要です」と、通塾を断った保護者の事例を紹介したが、東田氏は「その『○○中』という学校名を伝えたことで、その塾の合格実績にカウントされているかもしれませんね(笑)」という。

次のページ:塾が生徒や模試利用者の「合否情報」を集めたがる理由

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