「住民票のロック」とはどういう措置か(イラスト/大野文彰)
DVやストーカーの被害者を保護するための支援措置として、“住民票がロックされる”ことがある。もしもロックされた場合、どのような制限がかかるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
娘が妊娠して結婚するにあたり、彼の家族と同居することになりました。そこで、婚姻届と転入届を提出しに役所に行くと、彼と彼の家族の住民票に支援措置でロックがかかっているため、娘もマイナンバーカードが使えなくなると言われました。
彼は何のことかわからず、彼の母親も説明してくれないようです。娘やこれから生まれてくる子供にどのような不利益が生じる可能性があるか教えてください。(三重県・50才女性・パート)
【回答】
住民票のロックとは、家庭内暴力(DV)やストーカーなどに遭った被害者を保護するための支援措置として、その居所が加害者側に知られないよう、住民票の写しの交付や閲覧を制限する制度です。被害者が住民票や戸籍の附票のある市区町村に申し出て、保護の必要があると役所が認めた場合に、この支援措置の適用を受けることができます。
いったんロックがかかると、加害者として特定されていない第三者からの申請であっても、住民票や戸籍の附票の写しの交付及び住民票の閲覧は非常に厳しく制限されます。加害者が変名を使って申請したり、知人に頼んで申請することもあり得るからです。
支援措置の申出者本人か支援措置申出の時点で届け出た代理人が自ら役所の窓口に出向いて直接交付申請する場合を除いて、住民票や戸籍の附票の写しの交付を受けることは事実上できなくなります。またマイナンバーカードを使ってコンビニで証明書を取得することや保険証として使用することができなくなります。