仕事の疲れをとるための適切な「サウナの入り方」とは(写真:イメージマート)
ビジネスパーソンを中心に、日頃の疲れを癒やすために利用する人も多いサウナ。日本のサウナ愛好家は約1600万人ともいわれるが、「正しく入っていない人が多い」と警鐘を鳴らすのはサウナの効能を知り尽くした医師である。間違った入り方をすれば、時に命の危険にもつながるサウナの「正しい入り方」とはどのようなものか──。
ここ数年、サウナが空前のブームとなっており、2021年にはサウナの気分の良さを表わす「ととのう」が流行語大賞にノミネートされた。ブーム前から通い続ける“古参”も多いが、「なんとなく気分がスッキリする」「汗が出て気持ちいい」といった理由でサウナを利用する人が大半で、医学的な効果とリスクを正確に把握している愛好家は少ない。
慶應義塾大学医学部特任助教の加藤容崇医師が語る。
「サウナで大量に汗をかくと塩分と水分が排出され、血管が拡張して高血圧の予防になります。またサウナと水風呂、外気浴をセットで行なうことで自律神経が刺激され、血管が伸び縮みすることで弾力性が増し、動脈硬化と心疾患のリスクを軽減することが報告されています。睡眠改善や免疫力アップのほか、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの感受性を上げるという報告もあり、高血糖の改善効果も期待されます」
加藤医師はサウナ好きが高じて、その効能を医学的に研究。2019年に日本サウナ学会を設立して代表理事に就いた“サウナ専門医”である。『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社刊)の著書を持つ加藤医師によれば、海外にはサウナの効能を研究した論文が複数あるという。
米総合病院メイヨー・クリニックの報告では、サウナに週1回入る人と週4回以上入る人を比べたところ、週4回以上の人は心筋梗塞52%、アルツハイマー病65%、認知症66%、うつ病などの精神科疾患は77%リスクが低かったという。
一方でサウナ利用中に体調を崩して救急搬送されるケースもある。福島県郡山地方広域消防組合のレポート(2023年)によると、同管内では過去10年に101人のサウナ中の救急事故が発生し、その7割を60歳以上が占めた。
症状別では「失神・意識障害」「熱中症・脱水症」が多く、半数以上に動脈硬化や高血圧、糖尿病などの持病があった。
サウナは体に負担をかける──まずはこの事実を知っておきたいと加藤医師は言う。
「大切なのは、体にかかる負担をコントロールすること。高い健康効果を得るには、ただサウナに入るのではなく、その『入り方』が重要になります」