“孫疲れ”に注意(イラスト:イメージマート)
定年後の選択を間違えると、その後何十年にもわたって苦しい生活が続く一方、正しい決断をすれば充実の後半生が待っている。家族関係で「遅咲き老後」と「落ちぶれ老後」を分ける境界線はどこにあるのか──人生の難題に向き合う識者たちが最適解を教える。
不慣れな地域で外出機会減、認知症リスクも
老後の人間関係のなかで、気をつけたいのが子供との距離感である。「もし子供に呼ばれたとしても同居は避けるのが賢明です」と言うのは介護アドバイザーの横井孝治氏だ。
「親の立場からすると、子供が一緒に住んでくれたら心強く感じるもの。しかし、それ以上にデメリットが大きすぎる。生活費や住居費の分担以外に子供から金銭的な支援を頼まれ、老後資金が目減りすることもある。また生活リズムの違いから、親子ともにストレスが溜まりやすい。いざ親が要介護になると子供の負担も増大します。同居をきっかけに親子関係がギスギスしてしまうケースは枚挙にいとまがない」
不慣れな土地で周囲に知り合いがいないと外出機会も減り、うつや認知症に繋がることが少なくないという。後述する「孫」がギスギスの原因になるケースもある。
「連絡が取り合えるなら子供とは離れていてもいい。どうしてもというなら、せめて近居くらいに留めておきましょう」
孫の面倒見るか見ないか「支えられる時間とお金をきちんと伝える」
子供と同じくらい、孫との距離感にも気をつけたい。
「むしろ孫こそが親子関係悪化の温床になりやすい」と語るのは、シニア生活文化研究所代表理事の小谷みどり氏。
「孫を巡って親子の関係はこじれやすい。共働きの子供夫婦の代わりに孫の塾や習い事の送り迎えなどを担い、交通費や習い事の費用を祖父母が持ち出すパターンは多いです」
最初は喜んで孫を世話しても、時間とお金が臨界点を超えると“孫疲れ”となり、心身ともに疲弊して挙句は子供と孫を恨むことになりかねない。
「孫の援助を期待するのは、親がどれだけの資産を持っているか子供が知らないケースが多いから。親は貯金と孫に使っている金額を明かして、『支援には限界がある』と正直に伝えましょう」(小谷氏)
孫にかかる費用は子供が持ち、親にかかる費用は親が持つというルールを決めればお互いに過ごしやすくなる。
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※週刊ポスト2025年8月15・22日号