豊作なのにコメが十分に安くならない理由とは(写真:イメージマート)
2024年から2025年にかけて、全国的にコメ価格が高騰する「令和の米騒動」が起こったことは記憶に新しい。そこから一転、2026年にはコメ価格も落ち着いてきたように見える。だが、はたして今のコメ価格は、収穫量に見合ったものだろうか。豊作にもかかわらずコメ価格が下がりにくい背景を、イトモス研究所所長・小倉健一氏が解き明かす。
2025年産のコメ収穫量は2017年以来最大
豊作なら、コメは安くなる。需要が大きく増えていないのに供給が増えれば、普通、値段は下がる。ところが今の日本では、その当たり前が鈍くしか働いていない。
元農水官僚の山下一仁氏は、プレジデントオンラインの記事《豊作なのにコメ価格を吊り上げ続ける”真犯人”は明らか…「JA農協でも農水省でもない」という大間違い》(8月11日配信)で、「市場心理が真犯人なのではない」と書き、犯人を「JA農協と農水省」を名指しした。市場心理だけでは説明できない、という指摘には賛成である。一方、JAが値段を上げるため意図的に出荷を遅らせたと断定することはできない。何より見るべきは、誰かの悪意ではなく、そう動く方が得になる制度である。
2025年産の主食用米は718万1000トンで、前年より66万2000トン増えた。作況単収指数は102で、収穫量は2017年以来最大だった。2026年6月末の民間在庫も、農水省の需給見通しで使う数字では243万トンまで膨らんだ。さらに2026年産は、6月末の作付意向を平年並みの収量で計算すると732万トンとなり、需要見通しの上限711万トンを上回る。少なくとも今は、「コメが足りないから高い」とだけ説明できる局面ではない。
価格も下がってはいる。2025年産米の相対取引価格は2026年6月に60kg当たり3万1305円となり、前月から6%下がった。つまり「豊作なのに全く下がらない」ではない。豊作と在庫増に比べて下がり方が鈍く、高値が残っているのである。
なぜか。日本のコメ市場には、長年の農政が深く入り込んでいる。
