葬儀トラブルに巻き込まれないためには?(イメージ)
全国の消費生活センターなどに寄せられた葬儀トラブルの相談件数が、調査開始以降初めて1000件を超えた(2025年度)。前編では葬儀で料金トラブルが生じやすい構図とともに、30年前と比べると悪質な葬儀社は減っていることを解説した。それではなぜ、今なお葬儀トラブルが増え続けているのか。また葬儀トラブルを避けるにはどうすればいいのか。葬儀業界歴約30年、1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏が解説する。【前後編の後編】
「働き方改革」が葬儀業界にもたらした大きな変化
前編ではかつての葬儀業界に悪質な業者がはびこっていた実態と、それでも近年は改善傾向にあったことを述べました。それが2020年頃になって大きな変化が起こります。
働き方改革関連法が2019年から施行され、企業には長時間労働の改善が求められるようになりました。そして2020年、埼玉県の大手冠婚葬祭業者に対し、労働基準関係法令違反で、企業名を挙げて埼玉労働局長名で長時間労働の改善指導が行われるという事件が起こりました。
それまで、ほとんどの葬儀社は労働基準法を守っていませんでした。なぜなら葬儀の受注は24時間いつ入るか分からず、受注件数も日によって大きく変わります。そういう業態では正社員を雇うのは最小限にとどめ、繁忙期に長時間労働させるのがコスパが良かったからです。しかし同法の施行で、この考え方では今後やっていけないと、特に労働基準監督署に目を付けられやすい大手葬儀社は思い知ることになりました。
そこで大手葬儀社が導入したのが、徹底した分業制です。
葬儀社スタッフの業務の工程を時系列順に細かく並べると、病院搬送・打ち合わせ・設営・通夜担当・葬儀担当・火葬場担当というように分類できます。以前は一喪家に1人の葬儀社スタッフが張り付いて、病院搬送から火葬場まで一気通貫で担当していたものでした。しかしこのやり方では、担当を持った途端に公休予定は“あってないもの”になりますし、夜勤の翌日に通夜担当が入ると36時間連続勤務になってしまいます。私もかつては、3週間連続出勤で、かつその間36時間勤務を4回行うことがしばしばあったものです。4週間以上の連続出勤を経験していないのは、いつも4週目に熱を出して倒れていたからです。
しかし工程毎に担当者を替える完全分業制なら、人的資源を柔軟かつ効率的に配置できます。公休取り消しや残業が発生する前に、手の空いている次工程のスタッフに計画的に引き継げるようになり、公休の確保と残業時間の削減を達成しました。
