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運転手高齢化に加え2024年問題も 「路線バスの減便・廃止」が日本社会に及ぼす致命的な影響

外国人活用、消防職員採用…対策の効果は?

 バス運転手の不足に対してはさまざまな対策が始まっているが、いずれも決め手に欠く。政府内では外国人の活用を検討しているが、日本のような左側通行の国ばかりではない。慣れるには時間がかかるだろう。バス運転手は接客も必要だが、言葉の壁も問題となる。

 一方、三重県桑名市と三重交通は、定年を迎えた消防職員をバス運転手として採用することを盛り込んだ協定を締結した。これはユニークなアイデアだが、畑違いの分野からの転職では即戦力とはならないだろう。バス運転手の減少数の大きさを考えると、穴埋め効果としても限定的だと言わざるを得ない。

 東京23区などでは、利用者の事前予約に基づいて運行やルートやダイヤを決める「デマンド交通」の導入に向けた動きが広がっている。

 路線バスが通れないような狭い道を走行するため車種はタクシーやワゴン車を使用するのが一般的だが、これでは路線バスのように大量に運べず、運賃を少し高めに設定したとしても黒字化は難しい。実験段階で断念するケースは少なくない。

税金投入で維持できる時代は終わった

 現在浮上している対策の中で一番期待できそうなのが自動運転だ。東京都は西新宿エリアで期間限定の試行運転を始めた。岐阜市は11月25日から岐阜駅から市役所までのルートなど中心市街地で5年間の継続運行をするという。

 だが、人が運転するバスと遜色ない存在となるには、まだ乗り越えなければならない技術的課題がたくさん残っている。空飛ぶクルマはさらに時間がかかりそうである。

 仮に、自動運転の技術が短期間で飛躍的に向上することがあったとしても、過疎化が急加速で進行する地域にまで普及させるには膨大な予算とマンパワーを要する。それを誰が負担するのかといった具体的な仕組みづくりはこれからだ。

 そもそも運転手不足の解消を図るだけでは路線バスをめぐる問題は根本解決とはならない。少子高齢化しながら総人口が減少していく日本では、先に働き手の不足が起こり、消費者の不足(国内マーケットの縮小)が遅れてやってくるためだ。

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