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【日本経済が抱える“心臓の爆弾”】50年前のシステムを“つぎはぎ”する「全銀システム」の不安 表面化しない障害は日常的に発生

10月11日に発表された「全国銀行データ通信システムの不具合について」(全銀ネットホームページより)

10月11日に発表された「全国銀行データ通信システムの不具合について」(全銀ネットホームページより)

 近年では2021年2月から9月にかけ、みずほ銀行でATMが停止するなど8回もの大規模障害が繰り返された。いったいなぜこんな事態に陥ったのか。最大の原因はシステムの老朽化にある、とメガバンク関係者は指摘する。

「全銀システムは古いコンピュータ言語で書かれた巨大なシステムで、大きすぎるがゆえに若干の手直しはしつつも大幅な変更をしてこなかった。銀行業界全体で見ても、長引く停滞のなかでシステム開発・保守にヒト・モノ・カネをかけられなくなり、トラブル対応のノウハウも継承が困難になっている。表面化しないシステム障害は日常的に起きている」

 金融庁の「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」(2023年6月)によれば、2022年度に報告されたシステム障害は約1900件にものぼり、前年度から約200件も増加。その最大の要因が「管理面・人的要因」にあるという。

50年前のシステムを“つぎはぎ”

 経済活動の根幹を支える銀行のシステムに綻びが生じていることは決して看過できるものではない。経済ジャーナリスト・須田慎一郎氏の指摘。

「なかでも全銀システムはすべての金融機関とつながっており、みずほをはじめ個別行で発生したシステム障害よりも深刻な問題を孕んでいます。今回不具合が生じた中継コンピュータは保守期限を迎える6年ごとに更新され、2029年までに24回に分けて行なう更新作業の1回目でした。三菱UFJなどを対象にした初回でいきなり躓いたわけですから、残り23回の作業中に再び同様の大規模障害が発生することも考えられる」

 全銀システムの障害は稼働開始から50年間で初めてというが、その長い歴史が仇となった可能性がある。

「同システムは旧電電公社時代を含め、NTTデータが一貫して開発・保守を手がけており、競争のない独占状態で運用が行なわれてきました。システムに問題はないか、また運用コストは適正か外部の検証を受けることもなく、かかる手数料は利用者に押し付けてきた。そうした閉鎖的かつ非効率な運用体制にメスを入れられなかったことが、今回のトラブルの背景にあります」(同前)

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