キャリア

弘兼憲史氏が提言する「幸せな老後」の過ごし方 最も重視すべきは「楽しみを後にとっておかないこと」、“好物は最初に食べよ”の考えで

楽しみを後に残さない

 リタイア後の第2の人生では誰もがそれまでの人脈がどんどんなくなっていき、自分の存在そのものがなくなったようで空虚になってしまいます。だからこそ、「誰かの役に立つ」という要素も必要でしょう。

 多くの人を助けるボランティア活動はその一つですが、配偶者の役に立つだけでもいい。老老介護で面倒をみること、健康を維持して家族に迷惑をかけないことも「役に立つ」ということです。

 自分にとっての幸せは何かを整理したうえで、誰かの役に立つことを意識しながら、その先の青写真を描く──これが幸せな老後への近道かもしれません。

 しかし、人生には予想外の出来事が起きるということも忘れてはいけません。

 好転するケースでいえば、政府は2025年度から子供が3人以上いる世帯に大学無償化の方針を打ち出しました。これに該当すれば、子や孫の学費に予定していたお金がかなり浮きますから、老後の資金計画を前向きに組み替えられます。

 逆に、アテが外れて人生設計が崩れてしまうケースもあるでしょう。

 たとえば、老後は物価の安い海外に移住して悠々自適な生活をする、という生き方が少し前まで話題でした。ところが、急激な円安で“こんなはずじゃなかった”となっている人も多いはずです。

 何が起きるかはわからない不確かな時代だからこそ、人生の後半戦で最も重視すべきことは、「幸せや楽しみを後にとっておかないこと」でしょう。若い頃は、お皿の上にある一番の好物を最後に残していましたけど、今は「最初に食べよ」です。60を過ぎて「老後のために」と言っても、「あなたは今、老後ですよ」ということ。大事にとっておいても、明日病に倒れるかもしれないし、誰かに取られるかもしれない。

「今、自分は幸せか」を常に意識しながら、自分の人生を選んでいく。その選択次第で、あなたの第2の人生は、幸福にも不幸にもなるのです。

※週刊ポスト2024年1月1・5日号

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