キャリア

【東大からの合格者が激減】優秀な学生の「キャリア官僚離れ」に政府も危機感 長時間労働、やりがい喪失などの要因

 このうち総合職に関してはもう1つ大きな変化が見られる。東京大学の合格者が激減しているのである。

 国家の政策の企画立案などに携わる総合職と言えば、「キャリア官僚」と呼ばれる各省庁の幹部候補であり、東京大学出身者が例年トップを占めてきた。2023年の春試験においても大学別では東大の193人が最多だったが、前年度と比べて24人減った。現行の総合職試験制度となってから最少だ。東大からの合格者が200人を下回ったのは初で、10年前と比べると半減である。

 東大生の「キャリア官僚離れ」が進んだ理由はいくつもあるが、長時間労働の常態化が主要因の1つと見られている。若い世代は働き方に対する関心が高まっており、ブラック職場に対して「受け入れ難い」と感じる人が少なくない。国会議員からの事前の質問通告が遅く、国会答弁作成終了時間が夜中に及ぶといった官僚の過酷な働きぶりが敬遠されているのである。

 こうした官僚を取り巻く労働環境の悪さを見て、東大生に限らず他の一流大学でも「同じ激務ならば、官僚になるよりも、より多くの報酬を得られる外資系企業などに勤めたほうがよい」と考える学生が少なくない。最近は、起業する人も増えている。

 官僚OBには、天下りが規制されたことの影響を指摘する声が少なくない。かつてのように「官僚時代は安月給でも退職後に天下りルートに乗って多額の報酬を得られるので、民間に勤めるより生涯収入は多い」と言えなくなったことが官僚離れを加速させているというのだ。

 大企業は、少子化が進む中でより良い人材を確保すべく給与水準をどんどん引き上げている。優秀な学生たちの多くにとってはもはやキャリア官僚は「エリートの職業」とは映っておらず、「割に合わない仕事」になり下がってしまったということだ。

「官邸主導」で官僚は“やりがい”喪失

 優秀な学生を遠ざけている大きな要因はもう1つある。政策決定プロセスの変化だ。

 1990年代までは「官僚主導」であったが、経済財政諮問会議を積極的に活用した小泉純一郎内閣以降は政治主導が強まり、2014年に内閣人事局が設置されて政治家が幹部官僚の人事権を握るようになると首相官邸に権限が集中し「官邸主導」へと切り替わった。

 選挙で選ばれた国会議員が政策や人事をトップダウンで決めることについては「スピード感のある政治の実現」という評価の声もあるが、裁量権を制約される形となった官僚には「創意工夫の余地が少なくなった」との受け止めが広がっている。行き過ぎた「官邸主導」が散見されるようになったこともあって、官僚全体に委縮の傾向が広がり、“やりがい”が急速に失われているのである。

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