中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「さすがにコリャねーだろ!」“マズいもの”を食べた後の会計ほど虚しいものはない 人生史上最悪にマズかった食事を振り返る

人生史上最悪にマズかった「冷菜5種盛り」

 ちなみに人生史上最悪にマズかったのは、ドイツ・フランクフルトで食べた「冷菜5種盛り」。酢漬けのニシンが入っていることが分かっていたので、「残りの4種はピクルスとハムとアイスバインとオリーブかな。これらだとビールに合うんだよね♪」と注文。

 すると、想定外のものが出てきてしまった。白・紫・青・赤のヨーグルトにまみれた1kgほどのニシンの酢漬けと、少量のアイスバインが登場。要はすべてニシンの酢漬けなのに色が違うことで「5種」と言い張ってるのです!

 この毒々しい色とボリュームに度肝を抜かれ、すぐに戦意喪失。取り敢えず白いヨーグルト(無着色)のニシンを食べると、臭い。コレ、腐っていたニシンを強引に酢漬けにし、さらに誤魔化すためにヨーグルトまみれにしているんじゃないのか?とすら思えるマズさと臭さ(実際、ヨーグルトまぶしニシン料理はドイツには存在します)。連れと1切れずつ食べただけでビール代と合わせて5000円ナリのお勘定をしてその店から去ったのでした。結局、その時の旅行でドイツで一番ウマかったのはケバブだった、というオチも付きました。

 最後に私の会社員時代に先輩から言われた言葉を。彼とはよく22時を過ぎたあたりまで一緒に残業をしていました。「コンビニ弁当買ってきましょうか」と言うと彼はこう言いました。

「待て、あと1時間半ぐらいでオレもお前も終わるからその後メシ食おう。いいか、人生はあと40年だとしよう。するとメシが食える回数は1日2回とした場合、3万回ぐらいしかない。その貴重な1回をコンビニの弁当にするのは勿体ないことだ。もう少し待てば麻布十番の『はじめ』に行こう。うに丼食うぞ」

 私は彼ほどは一食一食を大事にできていないものの、さすがにマズいものを食べた後の会計ほど虚しいものはないと感じています。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。

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