重要資源であるリチウムの資源分布が激変へ(中国のリチウム電池向上。Getty Images)
スマートフォン、パソコンに始まり、電気自動車、ドローン、太陽光発電設備から各種産業用機器に至るまで、幅広い分野で利用されるリチウムイオン電池だが最近、その主要原材料であるリチウムに関して資源分布に影響を与えそうな事件が2つほど発生している。
1つは中国での新たなリチウム鉱脈の発見だ。中国自然資源部地質調査局は1月8日、「中国のリチウム鉱石採掘において一連の重大なブレークスルーがあり、世界全体のリチウム鉱石資源量における中国のシェアがこれまでの6%から16.5%に上昇、世界第6位から第2位に上昇した」と発表した。西崑崙(新疆ウイグル自治区西南部)~松潘(四川省西北部)~甘孜(四川省北部)にかけて2800キロメートルにわたりリシア輝石(リチウムとアルミニウムを含む単斜輝石)鉱帯が新たに発見され、その潜在資源量は3000万トンを超えるとされる。
USGS(米国地質調査局)のデータによれば、2023年末における中国の資源量は680万トン。ボリビア、アルゼンチン、米国、チリ、オーストラリアに次ぐ規模だ(より探査精度の高い基準である埋蔵量では、チリ、オーストラリア、アルゼンチンに次ぎ中国は第4位)。こうした資源分布が今後、大きく書き換えられることになるだろう。
中国自動車流通協会によれば2024年における新エネルギー自動車の中国国内販売台数は1089万9000台で、世界全体の約5割を占めるとみられる。完成車、リチウム電池などの輸出もあり当然、国内資源だけではリチウム金属需要を満たすことはできず、リチウム金属メーカーは海外での鉱床の買収、共同開発などを積極的に行っている。
たとえば、リチウム金属メーカー中国最大手、世界でも最大クラスの江西カン鋒リチウムでは2011年からグローバルでリチウム資源の開発を始めており、アルゼンチンでは塩湖、オーストラリア、アフリカ・マリ共和国などではリシア輝石鉱山などで採掘を行っている。その他の中国大手リチウム金属メーカーについても、海外に資源を依存する事業構造となっている。中国にとって、サプライチェーンの安全性を確保するといった観点からすれば、今回の国内での大規模鉱山発見の意義は大きい。