リスク分散は必要だが…
とはいえ全国のインフラがだいたいできあがった一方、八潮の陥没事故しかり、老朽化対策にもお金が必要になる新しい時代だ。前任の本部長、二階氏が唱えてきた「国土の均衡ある発展」のような決まり文句は色あせて聞こえる。
そう問うと、佐藤氏は「よっしゃわかった」といってこう述べた。
「総理も演説で言っているが、来たる恐るべき災害は東京直下にしろ南海トラフにしろ太平洋側の人口が集積している地域と重なっている。強靭化を考える時に大事な対策は、分散ですよ。いざ何かが起きた時、何もやっていなかったら、誰が責任を取るんですか」
田中角栄の「列島改造論」は、人口や産業の集積した“表日本”から、“裏日本”への分散による経済の拡大を唱えたが、その後、むしろ一極集中は加速した。リスク分散の必要性には異論はないが、族議員と官僚機構の密室で決める昭和のスタイルに先祖返りするようなら、静かに抗って透明化を求めなければならない。
取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)