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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

「本籍=皇居の人が3000人」時代遅れの日本の戸籍制度では“本人確認ができない”という大問題 氏名に振り仮名を記載しても本質的な解決策にはならない理由

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

絶対に必要な「生体認証」

 しかも、国民の義務や権利には戸籍より「住民票」のほうが密接に関係している。納税の義務や選挙の投票権などは住民票の氏名、年齢、住所が基本である。

 ただし、住民票の氏名と住所も当てにはならない。クレジットカード会社やリース会社が苦労するのは「多重債務者」の追跡だが、彼らはクレジットカードやローンの申請で、しばしば氏名や住所を使い分ける。

 たとえば、氏名の読み仮名を変えたり、同居家族の名前を使ったり、果てはペットの名前まで拝借したりして、住所も複数登録する。そうすれば、コンピューター上では“別人”となり、不正が可能になるからだ。

 つまり、前述のように本籍はどこに置いてもよく、さらに1人の人間が複数の氏名や住所を持ったり、1つの住所に本籍が異なる複数の人間が登録したりできるという極めて杜撰な状態になっているから、本人確認ができないのである。

 この問題は今年5月の改正戸籍法施行により、戸籍の氏名に振り仮名が記載されるようになったことでかなり防止できるが、それは本質的な解決策ではない。

 だから戸籍証明書や住民票には「生体認証」が絶対に必要であり、それがないマイナンバーカードは根本的に欠陥品なのだ。政府はマイナンバーカードの利用範囲を健康保険証から運転免許証やパスポートの申請などにまで拡大しているが、生体認証がなければうまくいくわけがない。

 となれば「戸籍は必要なのか?」「住民票と何が違うのか?」と問うべきだろう。

 世界中で戸籍制度があるのは、日本と中国と台湾だけである。韓国にもあったが、男系戸主中心の家父長的家族制度を土台にしていたため、男女同権などに反するとして2008年に廃止され、個人が中心の「家族関係登録制度」になった。

 他の国には、そもそも戸籍という概念がない。欧米諸国は「個人登録制度」が主流で、たとえばアメリカは親の国籍にかかわらず、アメリカ国内で生まれた子は生まれた時に生まれた町で「出生証明」(birth certificate)が登録されてアメリカ国籍になる。

 デンマークの場合は、デンマーク国籍の女性がデンマークの病院で出産した子には、生まれた時にデンマーク国籍と「市民登録制度(CPR/the Civil Registration System)番号」が与えられる。父親が誰かは問われない。そして、その子は基本的に教育費や医療費が無料になり、死ぬまで国に面倒を見てもらえる。

次のページ:戸籍と住民票を法律できちんと定義し直す

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