世の中では事実婚やLGBTQ(性的少数者)が増加し、個人と国を結びつけるレジストレーション(登録)がますます複雑になっている。それに対応できるよう、日本は戸籍と住民票を法律できちんと定義し直し、生体認証を入れてデジタル化すべきである。
今はNFT(Non Fungible Token/非代替性トークン)という偽造できないデジタルデータもある。NFTの所有者は「唯一無二のものを持っている」ことを証明できるので、その技術を活用すれば安全・安心な国民データベースの構築が可能となる。
さらに、それに登録する基本単位は現在の「戸=家」ではなく「個人」にして、デンマークのように女性からスタートすべきだろう。なぜなら生まれた子の父親が誰なのかは不確実で争いの元になる可能性があるが、出産した女性が母親であることは間違いないからだ。
もはや「戸=家」にこだわる必要は何もない。婚姻や家族関係などの副次的なものは別途、緩やかに定義すればよいのである。
すでに世界の主要国はデジタルで21世紀の時代に対応した国民データベースを構築している。一方、日本の戸籍制度は150年前の明治時代のままであり、完全に時代遅れだ。可及的速やかに廃止して、世界標準の生体認証付きデジタル国民データベースに作り替えるべきである。それができなければ、デジタル庁を設置した意味はない。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2025-26』(プレジデント社)、『新版 第4の波』(小学館新書)など著書多数。
※週刊ポスト2025年5月23日号
『新版 第4の波』(小学館親書)