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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

《支持率低迷の石破政権》大前研一氏が“最後の目玉政策”として期待する衆院選挙制度改革 「中選挙区連記制」導入なら多様な人材・民意を反映でき、中小政党にもメリット

小選挙区制の最大の問題は、衆院議員が小粒になったこと(イラスト/井川泰年)

小選挙区制の最大の問題は、衆院議員が小粒になったこと(イラスト/井川泰年)

 石破政権が窮地に立たされている。夏の参議院選挙でも苦戦が予想され、もし自民党惨敗となれば石破茂・首相に後はない。「石破首相に最後の目玉政策として提案してほしいのが衆院の選挙制度改革」というのは経営コンサルタントの大前研一氏。どういった選挙改革に期待しているのか、大前氏が今の選挙制度の問題点とともに解説する。

 * * *
 石破茂内閣の支持率が「危険水域」とされる20%台に低迷している(本稿執筆時点)。朝日新聞には「目玉政策なし」(4月2日付)と論評されたが、正確には目玉政策がないのではなく、石破首相の政策は「楽しい日本」「令和の日本列島改造」「地方創生2.0」「防災庁創設」などたくさんありすぎて、どれが目玉なのかわからない状態なのである。喩えて言えば、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」のようなもので、よく見ると石破首相のご面相は(失礼ながら)ミャクミャクそっくりだ。

 それはともかく、今夏の参院選では自民党の苦戦が予想されている。普通なら石破首相は昨年10月の衆院選に惨敗した時点で退陣だったが居座った。参院選でも敗北すれば、いよいよ年貢の納め時となるだろう。

 ならば、石破首相に最後の目玉政策として提案してほしいのが衆院の選挙制度改革である。

 石破首相はこれまで何度も、現行の小選挙区比例代表並立制には死票の多さや落選者の比例復活当選など課題が多いとして、1つの選挙区から得票数上位の2人以上を選出する中選挙区制に戻すことを提唱し、その選択肢の1つとして「中選挙区連記制」を挙げている。これは有権者が1人の候補者に投票するかつての「中選挙区単記制」と異なり、有権者が複数の候補者に投票できる制度で、多様な人材や民意を反映できて中小政党にもメリットが及ぶ可能性があるとされる。

 私は「中選挙区連記制」に大賛成だが、実際問題としては、石破首相に選挙制度改革は無理だろう。なぜなら、石破首相は自民党内の基盤が脆弱で政治力がなく、国民も選挙制度改革にはあまり関心がないからだ。

 さらに、小選挙区制で選ばれた議員たちは、自分が落選する恐れがある中選挙区制への変更に賛成するはずもない。しかし、今のところ何の功績もない石破首相が歴史に“爪痕”を残すとしたら、選挙制度改革しかないと思うのである。

 小選挙区比例代表並立制は1994年に導入され、1996年の衆院選から実施された。その目的は「金権政治の打破」と「二大政党制の実現」だった。しかし、その後も自民党の派閥裏金事件など「政治とカネ」の問題は続発しているし、二大政党制どころか野党は四分五裂している。

 石破首相は小選挙区制の導入が「二大政党制に収斂すると考えたのは間違いだった。制度さえ入れれば実現すると思っていたのは、私の考えの足らざるところだった」と述べているが、その認識は正しい。

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