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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

《支持率低迷の石破政権》大前研一氏が“最後の目玉政策”として期待する衆院選挙制度改革 「中選挙区連記制」導入なら多様な人材・民意を反映でき、中小政党にもメリット

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

国会議員も官僚も“小粒”になった

 また、小選挙区制にしなければ政権交代が起きないとも言われたが、それも間違いだ。政権交代は中選挙区制最後の1993年の衆院選で自民党が大敗した結果、非自民・非共産8党派の連立政権・細川護熙内閣が誕生している。つまり、中選挙区制でも政党の順列組み合わせによって政権交代は起こり得たのだ。

 小選挙区制の最大の問題は、衆院議員が小粒になったことである。彼らは人口26万?55万人ほどの“おらが村(地元選挙区)”への利益誘導しか考えていないため、「天下国家」を語れなくなってしまった。

 すでに本連載で述べたように、これは企業経営に置き換えて考えるとわかりやすい。大企業の場合、まず会社全体の戦略や長期目標があり、大きなビジネス領域や地域ごとに事業部や本部を組織して、その中で必要な部署を置き、戦略・目標に合わせた経営を行なっていく。その組織の最小単位として、「課長や係長などの管理者の下に何人の社員を置くのが適正か」を考えることを経営用語で「スパン・オブ・コントロール(SOC)」と呼ぶ。

 このアナロジー(類推)を使えば、小選挙区で選ばれる衆院議員は、大企業で言えば課長や係長クラスの存在にしかすぎないということになる。465人(衆院定数)の課長や係長が永田町に集まって烏合の衆と化しているのが今の国会なのであり、そのレベルの人間が徒党を組んで議論しても、「天下国家」に関する有効な戦略や戦術が出てくるはずがないだろう。

 国会議員が論じるべき「天下国家」は3つある。

 まずは「外交」だ。これは国際関係に対する見識と経験が必要だが、いま、そういうスキルを持っている衆院議員を私は寡聞にして知らない。関税措置をめぐる協議でトランプ大統領と面談した赤澤亮正・経済再生担当相が自分のことを「格下も格下」と言ったのは正直な本音であり、むべなるかな、である。

 次は「経済」だ。日本の税金、借金(国債)、社会保障などの制度がもたらす経年的な財政の歪みをどのように解決していくか、ということである。この問題について「財政の健全化」を熱心に唱えていたのは、私が知る限り、近年では谷垣禎一・元自民党総裁くらいである。さらに、日本の衰退に歯止めをかけて国際競争力を維持する産業を育てていくにはどうすればよいか、そのための人材をどのように育てていくのか──ということも極めて重要だ。

次のページ:3つ目は「安全保障」

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