味変カスタムの点では物足りなさ…
今回の『牛玉スタミナまぜそば』では、『肉だく(牛小鉢)』、『とろろ』、『キムチ』、『ねぎラー油』といった有料のトッピングも用意されている。今回それらのトッピングは注文しなかったが、味変カスタムを楽しめるのは、まぜそばらしい特徴といえる。ただ、ラーメン店などでまぜそばを注文した場合、酢、ラー油、マヨネーズなどの定番トッピングは無料で提供されることが多いが、吉野家ではそれらが用意されていないのは、残念な点だ。
また中華麺はあまり特徴がなく、暑い時期にツルッといただくにはいいのかもしれないが、“ガッツリ感”は少し物足りなく感じた。
このように気になる点はいくつかあったとはいえ、オーソドックスなまぜそばには収まらない、吉野家らしい独創的な魅力にあふれているのは確か。さまざまな具材やトッピングを合わせることで、牛煮肉の新たな側面を引き出すこともできそうだ。
牛丼チェーンが麺類に挑戦する難しさ
今回の『牛玉スタミナまぜそば』は吉野家にとっての初の麺ニューだが、松屋では2022年の冬に一部の店舗限定で『肉うどん』を提供していたことがあった。すき家でも昨年2月に『海鮮ちゃんぽんうどん』を販売するなど、牛丼チェーンが麺メニューに挑戦することはこれまでもあったが、外食チェーンに詳しいライターの小浦大生氏は、その難易度の高さを指摘する。
「飲食店においてメニューの多様化はユーザーの満足度を高めるための重要な施策ですが、牛丼チェーンの場合、調理を簡略化し、早く提供するというミッションがあるので、普段は提供していない麺メニューを導入するハードルは高め。また、ラーメン、うどん、そばなどは専門店が多く、ユーザーの舌も肥えているなかで、他ジャンルの店舗が“片手間”で提供していると思われては専門店に見劣りする。そういう意味では、牛丼チェーンの麺類への挑戦は、もともと決して勝算の高いものではないと言えるでしょう。
価格設定の難しさもあります。牛丼の場合、基本的に並盛で500円前後が基本の価格帯ですが、ラーメンとなると専門店では700円から900円程度が基本となることが多く、牛丼に比べて割高感が出てしまいがちです。かといって、安価で提供しようとしてクオリティーを下げてしまうと、支持されない。価格設定は本当に難しいと思います。とはいえ、麺好きなユーザーが多いのも事実。今回の『牛玉スタミナまぜそば』が好評なら、吉野家のみならず、業界として麺メニューの強化の流れもくるかもしれません」
吉野家初の麺メニューは、牛丼チェーンが「麺類の壁」を越えていく試金石になるのか。今後の展開にも注目したい。