小宮孝泰氏は妻に先立たれた悲しみをどう乗り越えたのか
家族に先立たれた人はどう生きていくのか──。お笑いトリオ、コント赤信号の小宮孝泰氏(69)は2012年に14歳下の妻、佳江さん(享年42)を乳がんで亡くした。
「妻に先立たれ、最初の1週間は義母と弟が家に泊まってくれたのですが、彼らが帰ると『ああ、本当にひとりになったんだな』という悲しみが襲ってきました」
そう振り返る小宮氏。喪失感から引きこもりがちになり、身の回りのことを疎かにしてしまう男性は多いが、小宮氏は長く悲しみに沈むことも、好きだった酒に溺れることもなかったという。
「僕の場合はやらなければならない芝居の仕事で忙しかったので、寂しさが紛れたのかもしれない。いま思うと意識的に忙しさに身を投じたところもありますが、演劇が救いになりました」
生前は妻の介護に追われた小宮氏だが、没後は「良い意味で自由な時間が増えた」と話す。
「いまでは『一日一芸術』と自分にノルマを課して、時間があれば映画か芝居を1つ観に行くことにしています。これまでより自由にできる時間ができたので、それをプラスに捉えて趣味を楽しんでいます。ひとりになったら恋をすることだってできる。僕の場合はなかなかそういう勇気が出ませんが(笑)」
「なんでもかんでもできるようになる必要はない」
いまでは独身生活を楽しめるようになった小宮氏。「お金のことや家事は妻に頼る部分が多かった」と言うが、どう乗り越えたのか。
「病気が分かって妻の“人生の締め切り”を感じるようになっていきました。僕はもともと釣りが趣味なのですが、ある時、妻に『あなた、芝居以外何もできないじゃない。魚を釣るだけじゃなくて料理も自分でやりなさいよ』と言われたんです。それで魚を捌くようになり、ちょっとした付け合わせを作るようになった。いまでは妻が仕向けてくれたと感じますが、それで身の回りのことをやるようになりました。
なんでもかんでもできるようになる必要はなくて、無理せず自分が興味のある範囲から始めてみたのが良かったんでしょうね。妻はカレーを香辛料から作っていたけど、僕はそこまでは無理ですから。掃除なんかはいまでも苦手です(苦笑)」(小宮氏)
時には人を頼りながら、ひとりで生きるたくましさを育んでいった小宮氏。「妻への感謝の気持ちが自分を律した」と続ける。
「毎朝、妻にお線香をあげて話しかけています。そうすると、いつも妻に見られている意識が出て、“あまりだらしない姿は見せられないな”という気持ちになるんです」
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※週刊ポスト2025年8月8日号