アメリカをはじめ海外大への進学にかかる費用、卒業後の進路は?(Sipa USA/時事通信フォト)
近年、日本の高校生が進学先に海外の大学を選択するケースが増えている。文部科学省が隔年で実施する調査によると、2023年度、日本の高校から海外大に現役進学したのは1635人だった(2021年度比211人増)。実際に海外大を目指すとなったら、何をどう調べ、どう準備したらいいのか。フリーライターの清水典之氏が、海外大進学を考える際に知っておきたい予備知識を取材。今回は、誰もが気になる「学費」や「生活費」の実態のほか、卒業後の進路などについて取り上げる。
年1000万〜1300万円の学費・生活費負担は奨学金で抑えられる
入学を希望していた海外大学に合格できたとして、次に立ちはだかるのは、やはり学費の“壁”であろう。ロシアによるウクライナ侵攻以降、円安が進んだうえに、世界的な物価高で現地での生活費も高騰しているはずだ。
海外大に進学する場合、一般的にはどれくらいの費用が必要になるのか。海外大学・大学院進学をサポートする予備校、アゴス・ジャパンでディレクターを務める松永みどり氏はこう言う。
「アメリカの上位私立大学の場合で、学費だけでおおよそ年7万ドル(約1000万円)かかります。海外からの留学生は通常、学生寮に入りますが、生活費も含めると1300万円くらいになるでしょうか。州立大学なら安いかというとそれほどでもなく、生活費含めて500万〜1000万円強といったところです。アメリカに比べると、ヨーロッパの一部の大学は学費が安かったりするので、最近はヨーロッパに目を向ける受講生が増えていますが、それにしても全額を自費で賄うのは、それなりの富裕層の家庭でない限り難しいでしょう」(松永氏・以下同)
年1000万円以上となると、国内で私立大医学部(6年間で平均3300万円程度)に進学するのと同レベルか、それ以上のお金がかかるということだ。
「では、一般家庭から進学するのは無理かというとそうでもなくて、大学からの奨学金や、海外大への進学を支援する財団系の奨学金があり、それらの審査に合格すると負担を抑えられます。大学からの奨学金も国内の財団系奨学金もほとんどが返済義務はありません。当校の受講生の過半数はこうした奨学金を得て留学しています」
アメリカの場合、大学からの奨学金には2種類ある。1つは「Need-based」と呼ばれ、家庭の収入額によって助成される奨学金だ。一般家庭の子弟にはありがたい制度だが、米国市民、永住者のみを対象にしている大学が多く、日本人留学生がもらえるとは限らない。もう1つは「Merit-based」と呼ばれ、学力やリーダーシップなど学生の能力に応じて給付される奨学金である。審査があるが、留学生にも適用されることが多い。どちらも返済義務はない。