食料自給率の実態とは(イメージ)
「わが国の農業・農村をとり巻く情勢は誠に厳しいものがある」――農林水産省は定番文句で、カロリーベースでの食料自給率の低さを強調する。同省によれば2023年度まで3年連続38%とたしかに低水準だが、「高ければいいものではない」と指摘するのは、食生活ジャーナリストの山口亮子氏だ。自給率など日本の食料問題に関するまやかしを、山口氏の著書『農業ビジネス』より一部を抜粋して再構成。【全3回の第3回】
食料自給率が低いのは問題なの?
農水省が最も重視する指標のひとつに、カロリーベースの食料自給率があります。エネルギー(カロリー)に着目して、国民1人に供給される熱量のうち国内で生産された割合を示します。2021~23年度の3年連続で、その値は38%に留まっています。
そもそもこのカロリーベースの食料自給率を、日本の農業の現状を測るうえで重要な指標にしていいのでしょうか。都道府県別のランキングをみると、高ければいいという単純なものではないことがわかります。
1位が223%の北海道なのは順当です。なにしろ、コメ、ムギといった穀物や、国によっては主食にもなるジャガイモのように、カロリーの高い作物を生産しているからです。
それに続くのが、204%の秋田県。確かに同県はコメの主産地という印象が強いものの、米どころは数あるなかで、なぜ2位に来るのでしょうか。
ここに面白いカラクリがあります。人口が少ないほど、自給率は上がるのです。
カロリーベースの食料自給率は、次のように計算します。
1人・1日当たり国産(県産)供給熱量÷1人・1日当たり総供給熱量
1人が1日に必要とするカロリーのうち、国産の食料で賄われた分ということです。都道府県別の自給率を示すとなると、県産品で賄われた分ということになります。
コメやムギといった穀物を作るほど、カロリーベースの食料自給率は高くなります。野菜と果物はカロリーが低いので、現状の自給率38%のうち、わずか2%と1%でしかありません。