悔やんでも失った時間は戻らない(イメージ)
昨今の就活市場は学生優位と言われるだが、現在40代~50代前半あたりの人たちは、いわゆる「就職氷河期」に苦しんだ。その世代には「就活=苦い思い出」という人も少なくないうえに、厳しい就活戦線を勝ち抜いたからといって、皆が皆、安定した人生を歩ているたわけではない。ある男性のキャリアを振り返りながら、人生設計の分岐点がどこにあるのか、考えてみたい。
安定のインフラ企業に勤めるも…
都内在住のHさん(40代/男性)は、絶望的な就職氷河期どまんなかの時期に超優良企業から内定をもらいながら、あっという間に退社してしまった過去の持ち主だ。
Hさんは東北地方の小都市出身。小学生の頃から成績が良く、県立高校から現役で都内の有名私立・K大学に進むと、就職活動で狙ったのはインフラ企業だった。
「特に地方では電力・ガス・鉄道といったインフラ企業は、公務員と並ぶ憧れの職業。そのあたりを中心に就職試験を受けると、奇跡的に1社から内定をもらうことが出来ました。実家に内定が取れたことを報告すると、母親は電話口で号泣。大学卒業のタイミングで開催された高校の同窓会では『勝ち組じゃん』『マジですげー!』と羨望の眼差しを受けたのを覚えています」(Hさん。以下同)
しかしHさんは、潰れる心配など無用の会社を3年あまりで辞めてしまう。気の迷いを誘ったのは、大学時代によく遊んだクラスメイトからの、遠慮のない言葉だった。
「当時は就職氷河期でしたが、付属校上がりのクラスメイトたちは、親のコネで広告代理店に潜り込んだり、サークルの先輩に引っ張られて総合商社に入ったり、それぞれうまいこと切り抜けたんです。そんな彼らと久々に会ったら、地元に帰った自分とは対照的に、あまりにキラキラした生活を送っていて……。さらに、『地味な会社を選んだよな』と見下され、『転職しちゃえよ』などと煽られているうちに、“彼らと同じステージに立ちたい!”と思ってしまったんです」