人生の選択はなかなか難しい(イメージ)
厚生労働省の調査によれば、2022年3月卒業者の就職3年以内の離職率は高卒で37.9%、大卒で33.8%に到達。もはや終身雇用は崩壊したという意見もあるが、見方を変えれば“7割近くは辞めていない”と捉えることもできる。一度入社すれば定年までいられることが見込める優良企業に就職できれば、その後の生活に大きな心配はないかもしれないが、人生に思うところがあり、退職して新しい道を歩み続ける人もいる。はたしてどのような選択が正解なのか。
1990年代末期に某有名企業に就職したMさん(50代/男性)は、40代目前でそのキャリアを捨てた。そのリアルケースから、考えてみたい。
地獄の氷河期、奇跡的に手にした「内定」
Mさんは第二次ベビーブームど真ん中の1973年生まれ。2024年の新生児数は約68万人だったが、同年生まれは200万人以上。就職活動は文字通り「地獄」だったという。
「1990年後半の就職状況は典型的な買い手市場で、資料請求のハガキを100社以上送るのは当たり前。どの業界も不景気で採用者数を極端に絞っており、連戦連敗で落ち込む日々でしたが、奇跡的に大手食料品メーカーから内定を貰えました。そのメーカーは業界シェアトップで、CMもバンバン流れているBtoC企業。友人だけでなくゼミの教授からも“奇跡だ”と言われました」(Mさん。以下同)
大学の成績、語学力、資格、運動部歴、特殊なバイト歴など、就活に有利な武器は一切なく、とにかく“下手な鉄砲、数打ちゃ当たる作戦”だったというMさん。誰もが名前を知る企業に入社したが、人生はそう甘くなかった。
「新入社員研修が終わると販売の最前線に放り込まれますが、現場で働くスタッフからの当たりはキツかったです。ほぼ全員自分より年上なのに、右も左も分からない私の方がポジションは上。良好な人間関係を築くのは、到底無理でした」
“現状維持こそ最善”のような社風に不満
それでも仕事自体はまともで、給与も同年代の平均より遥かに高く、辞める気はサラサラなかったというMさん。しかし30代に入ると不満が募るようになる。
「入社から10年ほど経ち、一通りの仕事は覚えたという自負が芽生えると、何か新しいことをやってみたくなりました。そこで色々な提案をしてみたんですが、上司の反応は悪くないのに、結果はことごとく却下。業界トップなので、“石橋を叩いた挙げ句、渡らない”というか、チャレンジは全く求められないんです。扱っている商品は生活必需品なので、バカ売れすることがない代わりに、会社の売上が極端に落ち込むこともない。社員はマジメで地味な人ばかりで、“現状維持こそ最善”みたいな社風なんです。それが“安定”につながっていたわけですが……」
