複数のタスクを前にパニックになったらやるべき3つのこと
私の運営する就労移行支援事業所のスタッフで、ADHDの南サヤカさん(20代女性)のエピソードをご紹介します。
サヤカさんは、ひとつの分野でリーダーとして働いています。彼女は3つの重要なプロジェクトを同時に抱えており、どれも期限が迫っていました。
通常なら、「締め切りが近いものから」「影響度が大きいものから」「○○さんにしかできないものから」と、優先順位をつけます。
しかし、サヤカさんはそれができず、3つのタスクを前に「これもやらなきゃ」「あれもやらなきゃ」と考えが堂々巡り。結局、どれにも手をつけられない状態に陥ってしまいました。
家に帰ってからも仕事のことで頭がいっぱいになり、家事もおろそかに。リーダー職にもかかわらず、上司や同僚からは「やる気がないのでは」と誤解されてしまいました。
これにどう対処したでしょうか?
サヤカさんが最初に行ったことは、タスクの洗い出しを、上司に協力してもらうことでした。あらかじめ、いまの状況を伝えておいた上で、面談(作戦会議)の時間をもらいました。
そこで、一つひとつのタスクを書き出し、分類分けを一緒に行いました。
さらにそれらを「何を・いつまでに」と、時間軸・重要軸に分けて取り掛かるタスクの優先順位をつけました。
また、上司と次の進捗確認の日を翌週に決めて、そこまでにどれだけのタスクが終わっていることが理想なのかを明確にしました。
この方法をまとめると、次の通りです。
【1】仕事量の視覚化
「自分が抱えている仕事の全体量」を正しく認識できないことにより、パニック状態に陥ってしまいます。そこで、仕事量の視覚化です。
「タスクをカレンダーや表に書き出す」「付箋やホワイトボードを活用して視覚的に整理する」「デジタルツールを使ってタスクを管理する」のがおすすめです。
【2】周りの人の力を借りる
仕事量の視覚化と同じくらい効果的なことは、「周りの人の力を借りる」ことです。
自分ひとりでスケジュールやタスク管理をしていると、ミスや思い違いが生じてしまいます。そこで、上司や同僚に協力してもらいましょう。
信頼できる上司や同僚に相談し、優先順位づけのアドバイスをもらいましょう。さらに、定期的なチェック体制を作るのがおすすめです。
【3】仕組み化
さらに「仕事量の視覚化」「周りの人の力を借りる」を「仕組み化」していきましょう。
たとえば、「毎日決まった時間にタスクを確認する」「毎朝の朝礼時に、優先順位を見直す習慣」「チェックリストを活用する」などです。
ルーティン化することで仕事の精度が上がり、ミスの軽減にもつながります。
サヤカさんは、これらの戦略で「作業スピードが大幅にアップ」「すべてのプロジェクトで目標達成」「不安も軽減」「仕事とプライベートの両立」といった目覚ましい成果をあげたのでした。
優先順位がつけられないことは、けっして「やる気がない」ことを意味しません。繰り返しますが、それはADHDという脳の特性によるものであり、適切なサポートや戦略があれば、十分に対処可能な課題です。