上品な鶏そばと絶品焼きめしの王道セット
お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。連載第19回は、北九州・小倉に遠征。老舗の営業再開を祝う昼酒となった。【連載第19回】
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兵庫県の明石まで取材に出かけ、1泊2日で3軒飲んで、ああ、うまかったと思った2日目の宵の口のこと。そのときまで、東京にとんぼ返りをするか、さらに西へ行くか、迷っていた。西とは九州、小倉で友人が待っていると連絡があったのだ。
友人というのは、20年ほど前に創刊した北九州市発行のPR誌「雲のうえ」のアートディレクターとカメラマンである。私は、この雑誌の創刊号に参加して以来、何度も北九州市に足を運び、そのたびに小倉に宿泊してきたから、街には馴染みがある。その地で、20年来の友人が待っているというのだ。行かぬ手はないだろう、ここは、やっぱり……。
ということで向かうは九州。はるかな旅路に思えるけれど、姫路から新幹線に乗り換え、弁当をつまみに缶ビール1本飲んでひと眠りすると、もうすぐ小倉だ。所要時間は1時間半ほどと、意外なほどに近いのだった。
ホテルで合流し、歩いて飲み屋街へ出る。どのスジになんの店があるか適度に知っているから、久しぶりでも気安く歩けるのがありがたい。小倉ならここと決めているバーへ行き、3杯ほどゆっくり飲んで店を出た。昔は、ある土地から別の土地へと旅することが楽しかったが、昨今はさすがに弱っているようだ。私を待っていてくれた友人たちも、その晩は飲み会の後だったから、彼等にも気を遣った。深夜、ラーメン屋で飲む酒も、この年になると身体に毒だ。おとなしくホテルへ帰ろうということになった。ところが、しばらく歩くうちに3人そろって気が変ったのだ。
「部屋で飲もうか」
「いいね。角、買って帰ろう」
誰からともなくそういう話になって、コンビニで買い出しをし、部屋飲みとなった。初老の修学旅行だ。話題は、若い頃何を考えていたか、が少し。昨今の仕事、趣味、健康についてが少し。その後、共通の知人である50代男性がハマっている濃厚な恋についての噂話が弾み、時計が2時を回ってから、さらに最後の1杯を作るという深い飲みになった。
小倉には姫路から新幹線で1時間半、あっという間だ

