東京都心部の不動産価格は右肩上がりの上昇が続き、東京23区の新築マンションの平均価格は1億5000万円超えという水準になっている(不動産経済研究所の発表)。ただ、今後も上がり続けるのかというと、そう単純な話ではなさそうだ。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏(オラガ総研代表)が言う。
「いわゆる都区部のマンションマーケットは完全に投資マネーに飲み込まれています。もちろん実需として買いたい人、買っている人もいるわけですが、どちらかと言えば金融商品化している側面も強い。人気の物件では購入の申し込みをして契約を締結し、物件の引き渡しの前に転売してしまうケースもあると話題になるほどです」(以下、「」内コメントは牧野氏)
ただ、そうした投資対象としての資金流入は、利上げなどの金融政策にも大きく左右されるため、今後も長く安定的な上昇が見込めるとは言い難い。遠くない将来に、東京都が人口減少に転じると見られるなかでは、23区内でも不動産価格の明暗はくっきり分かれることになりそうだ。
『街間格差』(中公新書)の著書がある牧野氏は「今後も東京都の地価が一本調子で上がっていくとは考えにくい」と見ている。転入する層と転出する層の両方がいて、人の入れ替わりのある街が“輝く街”として伸びていき、人の動きがない街では空き住居が増えるなどして“くすむ街”となっていくことが考えられるのだという。
「街としての将来を分ける要素は様々あるでしょう。職場への通勤の利便性は重要ですが、それだけではありません。教育水準や環境、街としての歴史、行政が重視する施策なども大きく影響することになると考えられます」
今回は、東京23区のなかでも下町として人気のある「城東エリア」から墨田区について、牧野氏が区内の「輝く街/くすむ街」を実名で挙げながら先行きを解説していく。