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ビジネス

《日本の鉄道防災の取り組み》3次元点群データを活用して保線業務を効率化する画期的な試みも 持続可能な鉄道に不可欠な「暗黙知」から「形式知」への変換

3D点群データで保線作業をサポート

 いっぽう展示会場では、JR西日本グループを中心とした多くの企業の展示があった。筆者はそのなかから、アジア航測の展示に興味を持った。従来の保線作業のあり方を変える可能性があると感じたからだ。

 アジア航測は、航空測量・空間情報・環境・防災の技術を持つ企業だ。一見、鉄道とは縁遠い企業にも思えるが、JR西日本と深い関係があり、鉄道関連事業を手掛けている。

 JR西日本は2013年12月にアジア航測の株式を追加取得し、同社と業務提携契約を締結した。鉄道のオペレーションのシステムチェンジを推進し、防災対策を強化するのが、その狙いだった。

 アジア航測は、今回の総合展示会で鉄道事業向けソリューションを展示した。そのなかで興味深かったのが、同社がJR西日本と共同開発した鉄道への適用を可能としたMMS(Mobile Mapping System)技術だ。

 この鉄道に適用可能なMMS技術は、「RaiLis(レイリス)」としてアジア航測がその技術をサービスとして提供している。JR西日本では、専用車両にカメラや3Dレーザースキャナ、GNSS(衛星測位)などを搭載し、線路上を走行させ、周囲の設備や施設などを高精度な3次元データとして取得・測定する。

「RaiLis」の画面。線路の周囲が3次元データになっている。赤い部分は、レールの位置から算出した建築限界で、他の設備・施設との離隔を測定できる。アジア航測のブースにて筆者撮影

「RaiLis」の画面。線路の周囲が3次元データになっている。赤い部分は、レールの位置から算出した建築限界で、他の設備・施設との離隔を測定できる。アジア航測のブースにて筆者撮影

 MMSで取得した3次元点群データを使えば、線路付近の施設や設備の立体構造を「点群(無数の点の集合体)」として把握できる。これにより、従来は作業員が現地で行っていた測量の一部を、パソコン上の仮想空間で完結できる。こうしたデータドリブンな保線業務の効率化は、鉄道業界ではまだめずらしく、画期的な試みと言える。

 日本の鉄道は、諸外国にくらべ熟練技術者に支えられた現場の「暗黙知」に依存する側面が多かった。しかし、今後深刻化する人材不足に対応するのは、デジタル技術で「暗黙知」を「形式知」に変換することが不可欠だ。その結果、自然災害に強く、持続可能な鉄道が実現することを期待したい。

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術解説者。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。

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