メガバンクは直近の決算で好業績を記録している(時事通信フォト)(時事通信フォト)
中東情勢を受けた市場環境の悪化により、非公開の融資市場であるプライベートクレジットに潜むリスクが顕在化しつつある。日本の大手金融機関の収益の柱となっていることもあり今後の業績に懸念が生じている。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が分析し、その警戒ポイントについて解説する。
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プライベートクレジット市場に潜むリスクが表面化
イラン情勢の悪化が市場を大きく揺さぶり、非公開の融資市場であるプライベートクレジットに潜むリスクを一気に表面化させている。中東リスクの高まりは原油高とインフレ再燃、そして利下げの遅延という負の連鎖を引き起こしており、市場は極めて慎重な局面を迎えている。特にそれは日本のメガバンクの株価には顕著にあらわれている。今回はこれらの背景を整理し、今後の投資戦略を考えていきたい。
地政学リスクにおいて最も警戒すべきは、実際の軍事衝突よりも「先行きがどうなるかわからない」という不確実性だ。不透明な環境下では投資家も経営者もリスクを取れなくなり、実体経済に深刻な影響を及ぼす。1990年の湾岸戦争時にも、開戦前の不透明な期間に信用リスクが急速に高まり、日経平均株価は夏から秋にかけて急落した。現在も同様の構図をたどっており、相場のボラティリティ(価格変動率)が高止まりする可能性が高い。安易な押し目買いに動くのは時期尚早と言わざるを得ない。
イラン情勢の緊迫化が長引けば、原油価格の高騰を通じて物価全体が押し上げられ、期待されていた米国の利下げは遠のく。高金利が長期化すれば企業の借入コストは高止まりし、にわかに懸念が高まっているプライベートクレジット市場に深刻な打撃を与える。
流動性のミスマッチが限界を迎えた明確なサイン
プライベートクレジットとは、投資ファンドなどの非銀行系金融業者が企業に直接融資する仕組みである。銀行の審査に通りにくい新興企業などが利用し、投資家にとっては高利回りが得られるため、ここ数年で市場規模は約2兆ドル(約300兆円)にまで急拡大した。
しかし、この市場は高金利と低流動性という二重の弱点を抱えている。融資の多くが変動金利型であるため、高金利下では借り手の返済負担が膨らみ、デフォルトリスクが高まる。さらに、公開市場と異なり換金が難しく、ファンド側が応じなければ資金を引き出せない。
その脆弱性はすでに現実のものとなっている。2026年2月に米ブルー・アウル・キャピタルがファンドの解約停止措置を取り、同年3月には米ブラックロックが約260億ドル規模のファンドで解約制限を導入した。これは流動性のミスマッチが限界を迎えた明確なサインである。加えて、AIの急速な進化により融資先であったソフトウェア系企業の事業価値が見直され、収益見通しが悪化していることも焦げ付きリスクを助長している。市場全体の崩壊には至っていないものの、非公開市場特有の不透明さを考慮すれば、強い警戒が求められる構造的な転換点にある。
メガバンクをはじめとした日本の金融機関もこの問題と無縁ではない。好業績の裏で上場株式や債券などの「伝統的資産」以外を対象とするオルタナティブ投資を拡大しており、プライベートクレジットへのエクスポージャー(リスク資産)という潜在リスクを抱えている。その一例を紹介しよう。
過去最高益を更新するがグローバル展開がリスクに
【三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)】
同社は過去最高水準の利益を更新する一方で、プライベートクレジット市場への潜在リスクを抱えている。2025年度第3四半期累計の親会社株主純利益は1兆8135億円となり、同期間として過去最高益を更新した。円金利上昇による資金利益の増加や持分法適用会社の好調が収益を牽引し、通期目標に対する進捗率も86.4%と順調である。
一方で、国内最大規模を誇るグローバル展開は、プライベートクレジットを含む海外オルタナティブ資産への幅広い関与を意味している。市場環境が悪化した際には、出資先ファンドの損失や信用コストの増大が業績の足枷となる可能性が高く、展開の広さがそのままリスクの広さになり得る点を意識しておく必要がある。株価は2月12日の高値3087円から4月1日時点で2808円と、約9%下落している。
