ホンダ×ソニー「失敗の本質」はどこにあったのか(右からホンダの三部敏宏・社長、ソニーグループの十時裕樹・社長)
「次世代の安心・安全を担保する自動運転」を標榜し2026年中の発売が予定されていたソニー・ホンダモビリティのEVの開発中止が発表された。世界的なEVシフトの停滞や米政権の政策転換が表向きの理由に挙げられるが、その深層にはホンダ内部で長年続く「技術の理想」と「財務の論理」による闘争があったという。ジャーナリストの大西康之氏がレポートする。【全文】
ホンダは来期までに2.5兆円の巨額損失を計上
ホンダとソニーグループが共同出資するソニー・ホンダモビリティが3月25日、電気自動車(EV)「AFEELA(アフィーラ)」の開発と販売を中止すると発表した。
2021年に就任した三部敏宏社長は「2040年に新車すべてをEVと燃料電池車に変える」と宣言し、その象徴だったアフィーラは、業界関係者の間で高い評価を受けていた。今年中に発売予定だった第1弾モデル「AFEELA 1」には、車体に40個のセンサーを付けるなど、ソニーの最先端技術がふんだんに盛り込まれ「完全な自動運転に最も近い市販車」と言われていた。
車内にはすべての座席に専用のディスプレイが付き、助手席ではオンライン会議、後部座席ではテレビ・ゲーム、さらには映画を観られる。指向性スピーカーやノイズキャンセル機能でドライバーと3人の同乗者には別々の音が聞こえており、仕切りがないのに音が干渉しない……。
完全な自動運転が実現する時代を見据え、クルマの中を「移動するリビング・オフィス」と見立てる機能だ。ホンダは「2030年ビジョン」の中で「『移動』と『暮らし』の新価値を創造する」と謳っており、ソニーの協力を得てその一端を示した。
未来を先取りした「AFEELA 1」にソニー・ホンダモビリティは8万9900ドル(約1428万円)という強気の値段をつけ、2025年に予約受付を開始。しかし今回の開発中止決定を受け、予約金は返却し、2028年以降を予定していた第2弾モデルの開発も中止する。
10年先を見据える大転換を進めていたホンダにとっては、とてつもない揺り戻しだ。
