月周回ミッションを終えたアルテミス2の乗組員たち(Getty Images)
中国経済に精通するアナリスト・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今回は米中間で激化する「宇宙開発競争」の現在地とロードマップについてレポートする。
「米国宇宙原子力発電のための国家イニシアティブ」
2028年に有人月面着陸を目指すアルテミス計画の試験飛行として、約53年ぶりの有人月周回飛行(アルテミス2)が行われ4月11日、10日間のミッションを終えて無事帰還した。この成功を受けて、ホワイトハウス科学技術政策局は14日、「米国宇宙原子力発電のための国家イニシアティブ」(イニシアティブ)を発表した。
2025年12月18日に発令された「米国の宇宙優位確保」に関する大統領令に応える形で「2028年には軌道上、2030年には月面に原子炉を配備し、2030年代には高発電効率の原子炉を配備する」といったタイムテーブルを提示した。宇宙空間や月面で大規模な活動を行うには安定した強力な電源が不可欠だ。発電効率の低い実験炉からスタートし、段階を踏んで発電効率を高めていく方針で、最終的には100kWe(kWeとは発電機が取り出す電気出力の単位)以上の発電能力の獲得を目指している。
SpaceXのCEO、イーロン・マスク氏は今年1月、「3年以内に年間100GWを超える太陽光発電設備、データセンターを宇宙空間に建設し、急拡大するAI需要を支える」などと発言したが、これは急拡大するAI需要を満たす電力を確保するための計画である。一方、「イニシアティブ」は、軌道上での大規模な製造・データ処理などのための施設、月面基地での活動を支えるための発電システム構築が目的であり、太陽光の当たらない空間では利用できないといった太陽光発電の弱点や、コストが高いといった蓄電池の弱点を補い、宇宙空間で安定した電源を確保するための計画である。
