定めがない場合には、法の原則に戻ります。民法では「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする」と定めています。
労働は雇用契約における労働者の債務の履行(弁済)です。自宅から労働する現場に向かうのは、労働者の債務を履行する際の活動になります。よって交通費は結局、弁済の費用ですから、労働者が負担することになります。
ただし、以上は理屈です。新幹線代は出せないと言われたということは、通勤手当の支給基準があるようです。会社が基準を盾に新幹線代を拒絶するか、何かの工夫を考えるかは、あなたの労働の必要性を会社がどの程度に評価しているかにかかっています。
新幹線代が支給されなければ退職すると覚悟しているようなので、簡単に要望を断わった上司への相談は諦め、会社の上層部に介護の必要性など困っている事情を詳細に説明し、明確に労働条件の変更を要請すべきだと考えます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2026年5月8・15日号