警察官不足が深刻化している(写真はイメージ)
「子供の数が過去最低を更新」──今年のこどもの日に流れたニュースに、多くの人が既視感を覚えたことだろう。だが、出生数の減少は今、この国の根本──治安のよい安全・安心な社会──を確実に変えつつある。その象徴の1つが「警察官不足」だ。近年、警察官採用試験の受験者数が激減しているという。人口減少問題に詳しい作家・ジャーナリストの河合雅司氏が検証する。【前後編の前編】
警察官受験者数の急減が引き起こす「年齢構成のいびつさ」
われわれの暮らしの「安全・安心」は守られるのだろうか。
警察庁が「警察官不足」に頭を悩ませている。
最大の要因は、出生数の減少だ。警察庁によれば、15歳~34歳人口は2010年には2843万人だったが、2024年は13.4%少ない2463万1000人に落ち込んだ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計で実績値に最も近い「出生低位・死亡高位推計」では、2040年のこの年齢層の日本人人口は1821万3000人で、2024年よりさらに26.1%少ない。採用がままならない状況が、年々広がっていくということである。
警察官試験は「日本の国籍を有しない人」には受験資格がなく、外国人労働者に頼ることはできない。都道府県警察の場合、受験者の多くがその都道府県の出身者だ。出産年齢の女性人口が激減している地方ほど出生数の減少が著しく、採用どころか受験者を確保するだけでも大変だ。
警察組織の年齢構成のいびつさも警察官不足の懸念材料となっている。2025年4月1日現在の警察官の年齢構成を見ると40~44歳はいずれも約8000人で、6000人台にとどまる24~34歳と比べて突出している。
採用難もさることながら、この先10数年にわたって退職者数の増加傾向が続くということでもある。このままでは退職者が新規採用者を上回り、組織が急速に縮むことも想定される。警察庁は定年年齢の段階的な引き上げを行っているが、第一線の現場業務は「若い力」を必要とするだけに、状況の改善は簡単ではない。
【警察官の採用試験受験者数・競争倍率と年齢構成】(出所:警察庁「警察組織の構造改革・優秀な警察官の確保に向けた新指針」2026年4月)
足下で「警察官離れ」が進んでいることも、警察官不足に追い打ちをかけている。警察庁によれば、2024年度の受験者総数は4万3059人で、2010年度の13万6845人の3分の1以下、競争倍率も9.5倍から3.5倍に減った。2015年度からの10年間でも2分の1以下となっている。年齢構成のいびつさが起きているのも、背景には受験者数の急落がある。
しかも、ここ数年の辞退率は30%を超しており、不人気ぶりが際立つ。2024年度は38.1%を記録した。都道府県警察は、辞退率の高さを念頭に置いて採用予定者数よりも多い合格者数を出す対応策をとっているが、それでも必要な人数を採用できないケースが出てきているという。

