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家計

「定年後の蓄えが500万円では心許ない」再雇用60歳男性が住宅ローンの残債1700万円を退職金で一括返済すべきか否か、悩ましい問題 専門家が提案する“賢い返済方法”とは

退職金で一括返済のつもりが…

 定年後、再雇用で働き始めたAさん(60歳)は、住宅ローンの返済を続けています。40歳のとき、70歳まで返済が続く住宅ローンを組みました。定年まで働き続ければ、退職一時金が2000万円ほど出ることがわかっていたため、「いざとなれば退職金で一括返済」のつもりで、漠然と考えたそうです。

 ところが、実際に再雇用で働き始めると、収入は現役時代の7割ほどに減りました。高年齢継続雇用給付金も含めて、手取りで26万5000円ほどです。家計は一気に赤字となり、退職金から毎月7万円超を取り崩す生活になりました。それほどムダ遣いしている意識はなく、解決策が見当たらなかったため、私たちのもとへ相談に来ました。

 Aさんの家計を分析してみると、削減できる余地はあるものの、極端に浪費している印象はありません。支出の約4割を住居費(=住宅ローン)が占めるため、その負担が大きく影響しています。住宅ローンがなくなれば家計は黒字化しますが、果たして一括返済は正しい選択といえるのでしょうか。

何より優先すべきは老後資金の確保

 Aさんの住宅ローンの中身は、残りの返済期間が約10年で、残債が約1700万円。金利は1.3%で、返済終了まで固定です。仮に残債を一括返済した場合、1700万円の出費となります。退職一時金が出たばかりで貯蓄は2200万円ほどあるため、一括返済しても500万円は残ります。ですが、定年後の蓄えとして500万円はちょっと心許ないかもしれません。

 老後は突然の病気やケガといったリスクが高まり、介護や住宅のリフォーム代などが必要となる時期もきます。こうした不測の事態に備えるためにも、まとまった資金を一気に手放すのは考えものです。返済を優先するあまり、不安が増大したり、生活が破綻したりしては元も子もありません。

 老後の蓄えが十分であれば、一括返済や繰り上げ返済を選択してもよいでしょう。ただし、資産運用でリターンが3%、5%と出せているなら、住宅ローンの金利と比較して、一括返済よりも運用を続けるほうが有利な場合があります。新NISAを活用しながら運用すれば、十分に可能性はあります。

 実際、退職金で住宅ローンを完済したものの、老後の生活資金がなくなって後悔する人を数多く見てきました。資産があるうちに運用し、資産寿命を延ばすほうがうまくいく可能性は高いでしょう。資金に余裕がない人ほど、慌てて繰り上げ返済するのではなく、長期的な視点で対策を講じるべきです。

次のページ:「返済額軽減型」の繰り上げ返済を検討する

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