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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

お酒を提供する店で「出禁」になる客のトホホな生態 嘔吐や粗相だけじゃない、店側が嫌がる“最悪の客”とは

その人がいるだけで店の空気が悪くなる

 汚い話が続きましたが、出禁でもっとも多いであろう、そして店側として困るのが「場の空気を悪くする客」です。その人一人がいるだけで、本当に空気が悪くなり、他のお客さんが次々と去っていく状況というのがあるのです。

 常連客で賑わうバーがあるのですが、そこにやってきたのが、酔っ払った50代後半と見られる男性。カウンターに着席するものの、黙っている。お冷やを出したら飲むものの、そこから20分、何も喋らず何も注文しない。スタッフのあいだには「この人なんなの?」という空気が流れ、常連客も「変なヤツが来たな」という状況に。

 普段からこの店は隣り合った客同士が楽しくコミュニケーションをする店です。カウンターの隣の紳士が「どちらからですか?」なんて話しかけると、ボソッと「四国からです」と答えた。紳士は「私も四国に先週旅行したんですよ!」と、会話を続けようとしたところ、その男性はハローワークで見つけた仕事で四国を離れてここまで来たものの、現場ではバカにされている、などと愚痴り続ける。

「オレの本業は土建屋なんだよ! なのに今の職場ではただただ警備的なことしかさせてもらえない。なんなんだよ、この会社は! そしてこの街は!」

 こんなことを大声で言うわけです。すると、カウンターの他の客は次々と「お会計を……」と言ってくる。結局、お店はこの男性を出禁にすることにしました。

 こうしていろいろなケースを見てきましたが、お店が出禁にする理由でもっとも多いのは、「場の空気を殺伐としたものにする」客ではないでしょうか。「あの迷惑客が来るかもしれないから、もうあの店には行かないようにしよう」と考える人が出ることを、店側は懸念するのです。たった一人の迷惑客により、大切なお客さんが5人離れてしまう事態だってあり得ますからね。そうなったら最悪です。

 私自身、飲食店で働くようになって、店の経営を守るうえでは、時として「出禁」という強硬手段も必要ではないか、と実感するようになった次第であります。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』(鹿砦社)。

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